コンバイン 選び方の起点は「1日に何ha刈るか」
最初に、品種や作期ごとの刈取対象面積と、実際に収穫へ使える日数を書き出します。「必要日量=対象面積÷使える日数」、さらに「必要実働能率=必要日量÷1日の刈取実働時間」と置けば、候補機に必要な能力の輪郭が見えます。日数には、暦上の収穫期間ではなく、他作業と競合する日、共同乾燥施設の休止日、作業者を確保できない日を除いた日数を使います。実働時間も、朝露が切れるまでの待機、ほ場間移動、籾排出、給油、清掃を除いて見積もります。カタログの作業能率は所定条件での値なので、そのまま自家の1日処理面積にはできません。倒伏、湿った作物、小区画、変形田、頻繁な移動がある経営ほど、過去の日報や現有機の実績時間を基準に候補を比較します。
面積だけから「この規模なら何条」と決めると、作期分散や受託面積の違いを落とします。同じ面積でも、単一品種を短期間に刈る経営と、品種を分けて適期を広げられる経営では必要能力が異なります。今後の受託予定や規模拡大は、確定分と未確定分を分けて計算してください。購入費だけでなく、保険、定期点検、消耗部品、格納、運搬車、乾燥調製まで含めた年間費用も整理します。自家所有の必要日量が小さい場合は、共同利用、レンタル、作業委託も同じ条件表で比較します。農林水産省の導入方針も、利用規模の確保に加え、ほ場、農道、運搬、乾燥施設を組み合わせて考える考え方を示しています。条数の候補は、この工程計算を終えた後に二、三案へ絞るのが実務的です。
自脱型・普通型と条数は作物と区画で絞る
水稲を中心に収穫するなら、穂先だけを脱こく部へ送る自脱型が主な候補です。井関農機の公式説明では、稲には主に自脱型、大豆やそばには汎用・普通型を用いると整理されています。複数作物を一台で扱いたい場合でも、「普通型なら何でも刈れる」とは限りません。対象作物、ヘッダ、専用キット、こぎ胴やローターの設定、刈高さ、作物水分などの適用条件を、候補型式の公式仕様と取扱説明書で一作物ずつ確認します。水稲と麦だけなのか、大豆やそばまで含むのか、種子用を扱うのかによって必要仕様は変わります。利用頻度の少ない作物は、専用機を所有せず委託する案も費用比較に残します。
条数を増やすと一行程の刈幅は広がりますが、機体寸法、質量、旋回に必要な余地、輸送条件も変わります。メーカーの商品一覧には2条から7条までの自脱型や普通型が掲載されており、同じ条数でも馬力、クローラ、タンク、排出装置、水平制御などは一様ではありません。したがって、条数は能力の代名詞ではなく、候補を分類する一項目として扱います。小区画や狭い進入口が多ければ、幅の広い機体で刈取部の能力を生かせないことがあります。一方、まとまった長方形区画では、旋回回数や籾排出の停止を減らせる仕様が効きます。最低地上高や接地圧といった数値だけで湿田適性を断定せず、地域での実演、販売店が把握する類似ほ場での適合、取扱説明書の使用条件を照合してください。
グレンタンク・運搬・乾燥機を一つの工程として見る
刈取部が速くても、タンク満量のたびに運搬車を待てば必要日量は達成できません。袋取り方式は籾袋の交換、積み降ろし、運搬に必要な人数と身体負担を確認します。グレンタンク方式は、容量だけでなく、満量までの時間、排出時間、オーガの長さと旋回範囲、排出する側、コンテナやフレコンとの高さ関係を実機で見ます。農研機構も、自脱型ではグレンタンク方式が一般的で、排出能力と操作のしやすさが重要だと説明しています。運搬担当者が兼務するなら、コンバインから乾燥機までを往復する時間を測り、収穫機を止めずに回せる台数と容器数を計画します。品種切替時の機内清掃や、種子用・食用を分ける運用がある場合は、残留しやすい箇所と清掃時間も選定条件です。
乾燥調製側では、乾燥機の張込容量だけを見ず、一日の受入可能量、張込み開始時刻、乾燥終了までの時間、次ロットへ切り替えられる時刻を確認します。農林水産省の導入方針には、運搬車・運搬用具をコンバインの能力に合わせることと、収穫量に見合う乾燥機または乾燥施設を整えることが記されています。共同乾燥施設なら、受入時間、予約、品種切替、荷受け単位も刈取日量の上限になります。候補機ごとに「刈取開始から籾排出、運搬、張込み完了まで」の一巡時間を紙に描き、最も遅い工程を探してください。乾燥機が上限なら、コンバインだけ大型化しても待ち時間が増えます。反対に運搬が不足するなら、タンク容量の比較より先に運搬車と人員の増強可否を決めます。
寸法・保守・安全装備を実機で最終確認する
候補が絞れたら、最も狭い農道、橋、進入口、畦越え、格納庫入口の実測値を販売店へ渡します。仕様表では全長、全幅、全高、機体質量を確認し、作業時と収納時で張り出しが変わる部分、オーガ展開時の障害物、輸送車への積載条件も照合します。格納庫は入口を通れるだけでなく、日常点検、刈刃やベルト類の確認、清掃、給油を行う空間が必要です。実機では、実際に運転する全員が乗降し、着座位置から前方・側方・後方を確認します。操作レバー、モニター、警報、緊急停止、手こぎ操作、排出操作、清掃口へのアクセスも確認項目です。自動操舵や収量計測は、通信契約、補正情報、データ出力先、利用者ごとの操作教育まで含めて必要性を判断します。
安全装備については、農研機構が自脱型コンバインを安全性検査の対象とし、合格機を公表しています。安全性検査は任意の検査ですが、候補型式の受検・合格状況は比較材料になります。中古機では使用時間だけで結論を出さず、整備記録、取扱説明書、安全装備の作動、警告表示、刈刃・搬送部・脱こく部・クローラの摩耗、油や燃料の漏れ、部品供給の見通しを販売店の点検と実演で確認します。新品・中古を問わず、繁忙期の連絡先、出張対応範囲、消耗品の在庫、代替機の有無、保証対象と除外条件を見積書と一緒に残してください。最後は候補ごとに必要日量を満たせる根拠、入れないほ場の有無、工程全体の追加投資、停止時の支援策を一枚にまとめ、総額と収穫遅延リスクを比較して決定します。