本稿で確認した一次資料には、全国の中古コンバインを同じ条件で集計した平均価格表は見当たらなかった。そこで参考になるのが、JAなどが公開する実車の掲載価格である。JA全農長野が2025年8月に登録した成約済みの3条刈りでは、アワーメーター欄が616のイセキHVG323が税込55万円、390のイセキHFG325Gが150万円、223のクボタER329が200万円だった。いずれも整備済みだが、交換されたチェーン、ベルト、刃、ローラーなどの内容は個体ごとに異なる。これは統計的な全国相場ではなく、同じ3条刈りでも掲載例に145万円の幅があったことを示す観測値である。

したがって、「3条ならいくら」と先に予算を固定するのは避けたい。最初に自脱型か普通型か、条数、馬力、グレンタンク容量、湿田仕様など必要条件を決め、その条件に合う在庫だけを比較する。比較する価格には確認日を付け、成約済み在庫は過去例、販売中在庫は現在の提示価格として分ける。遠隔地の安い機体を混ぜる場合は、運送費と地域の整備対応が確定するまで候補価格に数えない。相場とは広告の最安値ではなく、自分の地域で購入・整備できる同条件機の価格帯と考えると判断を誤りにくい。

クボタの公式購入ガイドは、中古農機についてアワーメーター、整備状況、取扱説明書の有無を確認するよう案内している。同じ販売年でも使用時間によって状態が異なる一方、メンテナンスによっても機械の状態は変わるためである。比較表には、型式、製造番号、販売時期、稼働時間、条数、馬力、仕様、保管状況、整備済みか未整備かを1台ずつ記入する。アワーメーター表示の写真も受け取り、表示値が何月何日時点か、納車までに構内移動などで増える可能性があるかを確認する。

整備済みという一語だけでは比較できない。「どの部品を交換したか」「点検だけで継続使用する部品はどれか」「次の刈取期までに交換が見込まれる部品はあるか」を明細にする。JA全農長野の掲載例では、同じ3条刈りでも扱ぎ刃、カッタ刃、引起しチェーン、駆動ベルト、オーガ螺旋、走行部ローラーなど、整備項目が機体ごとに違っていた。整備前の安い個体と整備済み個体を比べるなら、前者には販売店が見積もった納車整備費と部品代を加える。稼働時間に一律の合否線を設けず、使用履歴と現物の摩耗、交換履歴を組み合わせて判断する。

現車では、まずエンジンを停止し、キーを管理した状態で外観を確認する。クローラの亀裂や摩耗、転輪とスプロケット、刈刃、引起し爪・チェーン、搬送チェーン、こぎ胴周辺、カッタ刃、ベルト、オーガ先端、油や燃料の漏れ跡、配線、腐食、補修跡を販売店担当者と順に見る。摩耗量の判定やカバー内部の点検は取扱説明書に従い、必要なら販売店の整備担当者に依頼する。農研機構は、オーガ先端のビニル部も可動部への接触を防ぐ防護の一部としており、破損時は交換が必要としている。防護カバー、安全標識、緊急停止装置などが欠損・改変されていないかも確認項目に入れる。

始動や作動確認は、販売店の管理下で周囲を立入禁止にして行う。始動性、警告表示、異音、排気、走行、旋回、刈取・搬送・脱穀・排出の作動を確認するが、回転中の刈取部、カッタ部、搬送部、オーガへ手を近づけてはならない。農研機構はカッタ部について、エンジンが停止していない状態では絶対に手を入れないよう注意している。安全装置の作動確認も自己流で行わず、対象型式の取扱説明書と販売店の手順に従う。実演できない場合は、その理由と納車前にどこまで確認するかを書面に残す。

候補を絞ったら、見積書を「機体価格、消費税、納車整備、交換部品、運送・積み降ろし、付属品、保証」に分ける。JA全農長野の公式サイトも、表示額を税込参考価格としながら運送費を別途加算すると案内している。さらに同サイトはアフターサービス上の理由から取引対象を長野県内のJA組合員に限定している。これは全国共通条件ではないが、中古農機では販売地域と保守範囲が価格と切り離せない例である。遠方在庫では、誰が運ぶか、故障時に地元販売店が対応できるか、出張費が必要か、部品を手配できるかを契約前に確認する。

経営判断では、納車総額だけでなく「納車総額÷予定使用年数」に年間点検整備費の見積額を加え、収穫委託などの代替手段とも比較する。安くても刈取期に部品待ちとなれば、適期収穫や乾燥調製の工程へ影響する。保証は期間だけでなく、対象部位、免責、出張修理、運送費の負担を確認する。契約書には型式・製造番号、付属品、取扱説明書と鍵、引渡し前の交換部品、納期、支払総額を記載してもらう。購入判断日は刈取直前に置かず、納車後に自分のほ場条件で操作確認と点検を行える時間を確保する。価格、状態、整備体制、納期の四つがそろった機体を選ぶことが、結果として中古コンバインの費用を管理しやすくする。