高温による着色の遅れを、日照不足と決めつけない
農林水産省の令和7年地球温暖化影響調査速報では、ブドウの果実肥大期以降における着色不良・着色遅延が、西日本の4〜5割の地域で確認された。農研機構によると、赤色・黒色品種の果皮を着色させるアントシアニンの合成は高温で阻害される。このため、房の色が薄いことだけを根拠に「光が足りない」と判断し、摘葉や新梢の切除を一気に進めるのは危険だ。
農研機構が開発した予測システムでは、「巨峰」の着色不良を満開50日後、収穫のおよそ40日前に予測する設計となっている。また、着果制限や光環境の調整などの対策は、収穫の少なくとも1か月以上前に講じる必要があるとしている。満開日、果粒軟化日、着色開始日を園地ごとに残し、今年の判断材料と来年の対策時期の両方に使いたい。満開50日後という日数は同システムの「巨峰」に対する設定であり、他品種へそのまま当てはめない。
葉を外す前に、果房へ直射が入る時間帯を見る
山梨県が2026年7月21日に公表した高温対策では、着色始めの品種について、過度な新梢の切除や摘葉を控え、必要以上に棚面を明るくしないよう呼びかけている。まず午前と午後に同じ列を歩き、袋や傘の上部、房の肩、棚の欠けた部分へ直射が入る場所を確認する。高温が続く直前に棚全面を一律に明るくするのではなく、果房を急に露出させる枝管理を止めることが先になる。
一方で、農研機構は着色対策として新梢の誘引、摘心、葉摘みによる果実周辺の光環境改善も挙げている。重要なのは「明るいか暗いか」の二択ではなく、弱い散乱光が届く状態と、果房を強い直射にさらす状態を区別することだ。房の向き、棚の隙間、葉を外した日を簡単な園地図や定点写真に残せば、色づきだけでなく日焼けとの関係も後から検証できる。変色を外観だけで病害や生理障害と断定せず、原因が不明な場合は地域の普及指導機関などへ相談する。
根へ入れる水と、夕方に冷やす水を混同しない
山梨県の資料は、着色期のブドウについて、夜温低下による着色向上を目的に、夕方のほ場散水を5ミリ程度、または棚面への散水を10アール当たり200リットル行う例を示している。これは地域の条件に基づく冷却対策の目安であり、根域全体の水分を補うかん水量とは目的が異なる。散水前後の気温、開始時刻、所要時間、翌朝までの葉や果房の濡れ方を記録し、病害リスクや水源能力も考えて地域指針に合わせる。
同資料の果樹全般の目安では、高温・乾燥時のかん水を成熟期は約5日間隔で20ミリ、果実肥大期は4〜5日間隔で30ミリとし、一度の多量かん水を避け、収穫5〜7日前から控えるとしている。ただし、土質、草生、根域、降雨、品種、出荷基準によって適量は変わる。冷却散水をしたから根域も十分に湿ったと考えず、代表地点の土壌水分と樹の状態を確認し、降雨量も含めた水収支で次回を決める。全国一律の数値としてコピーせず、地元の栽培暦や普及指導機関の基準を優先する。
新梢の勢いを見て、今する管理と来年の修正を分ける
山梨県は、新梢伸長が続く樹では、着色が全体に回った時期に新梢先端を摘心し、副梢を2〜3枚残して摘心する方法を示している。養水分の競合を抑えるための作業だが、着色前から一斉に切るという意味ではない。列ごとに新梢先端の伸び、果房への直射、着色の回り方を確認し、作業日と対象区画を記録する。シャインマスカットについては、同資料が日焼けや縮果症を避けるため、果粒軟化期以降の新梢管理を求めており、赤・黒系品種の着色管理と混同しない。
すでに収穫間近で色が遅れている房に対し、着果量や樹冠構造を大きく変える処置を慌てて加えると、効果を確認する前に収穫期を迎える。今季は直射回避、水分の急変防止、適期収穫を優先し、満開50日後ごろの気温、着果量、房重、棚面の写真を来季の資料として残す。反射資材、遮光設備、着果制限などは、品種別の地域基準と作業時期を確認したうえで次作の計画に組み込む。