被覆前は、表面ではなく畝芯まで湿らせる
処理の成否を分ける最初の確認点は、フィルムの種類より土の湿り方です。「陽熱プラス実践マニュアル」は、土壌の種類や透水性で異なるとしたうえで、一般的な目標を最大容水量の60%以上としています。現場での目安は、湿った土を強く握り、ゆっくり手を開いたときに土塊へひびが入る程度です。畝の肩だけを濡らして終えず、畝芯の土を採って確かめます。水が浸透しにくいほ場では、一度に大量散水するより、少なめの流量で時間をかけるか、複数回に分けます。
前作残渣の搬出、施肥、畝立て、センサー設置、散水、被覆までの順序を作業前に決めておきます。高温に弱い電子機器やプラスチック製品は、施設を閉める前に外へ出します。被覆時は畝面との隙間、フィルムの重なり、ハウスの端や谷部を確認し、処理開始日時、散水終了時刻、使用資材、破れの有無を記録します。施設を閉め切った後の内部は危険な高温になり得るため、確認や補修は換気して安全を確保してから行います。
測るのはハウス気温ではなく、同じ場所・同じ深さの地温
フィルム表面温度やハウス内気温だけでは、作土に与えられた熱を判断できません。農研機構の方法では、施肥・畝立て後の処理開始直前に温度センサーを埋設し、深さ15cmの地温を測ります。圃場内ではできるだけ中央、畝の中心に近い位置を選び、途中で深さや場所を変えません。比較できる記録にするには、処理開始から終了まで、例えば1時間間隔で連続測定し、時刻ごとの温度を残します。
中央の測定値だけで圃場全体が均一に加熱されたと決めつけないことも重要です。ハウス外周部は効果が劣りやすいとされるため、被覆の浮き、隙間、泥水の流入跡を重点的に巡回します。温度計を追加できる場合は、毎年同じ外周位置にも置けば、中央との差を翌年の整地、散水、被覆方法の改善に利用できます。温度計がない場合は近隣アメダスの最高気温と日照時間から地温を推定する方法も公開されていますが、適用する深さや被覆条件に制約があるため、現地実測を基本にします。
終了日は日数ではなく、対象とする温度帯の積算時間で判断する
太陽熱土壌消毒の効果は、地温の高さと、その温度が続いた時間の組み合わせで変わります。処理途中でデータを回収し、一定温度以上になった時間を日ごとに積算すれば、曇天が続いた年や被覆開始が遅れた年を、暦の日数だけで同一に扱わずに済みます。フィルムを補修した日や施設を開けた時間も記録し、温度推移と重ねて確認します。
必要な温度と時間は対象とする病原体、土壌水分、深さなどで異なるため、全国一律の終了基準は置けません。地域の試験研究機関や普及指導機関が示す対象別データと、同じ測定深度の記録を照合して終了を判断します。深い層ほど地温が上がりにくく、太陽熱処理だけですべての土壌病害虫を抑えられるわけでもありません。期待した地温に届かなかった場合は「実施済み」とせず、その事実を次作の観察計画と地域の指導機関への相談材料にします。これは症状から病害を断定する作業ではなく、処理条件を客観的に残す管理です。
被覆を外した後は、土を混ぜず、基肥量をいったん見直す
畝立て後に処理したほ場では、終了後の深耕や再畝立てで、加熱が不十分だった下層土を処理済みの層へ混ぜないようにします。泥の付いた農機や長靴、処理外の土、台風時の泥水も再持ち込みの経路になります。作業動線を決め、必要な機械は洗浄してから入れます。フィルムを外した日、土を動かした場所、浸水や被覆剥がれの有無まで作業日誌に残すと、次作で問題が生じた際に条件をたどれます。
高地温は病害虫だけでなく、土壌有機物の分解と窒素の無機化にも影響します。農研機構の研究では、温度が高く処理期間が長いほど無機態窒素が増える傾向が確認されています。そのため、前年と同じ基肥を機械的に入れず、処理後のEC、硝酸態窒素などを地域の土壌診断法で確認し、作物、土壌、地温履歴に応じて普及指導機関等と施肥量を調整します。特定の試験で示された減肥率を、そのまま別のほ場へ当てはめてはいけません。太陽熱処理に農薬を組み合わせる場合は、必ず最新の登録内容と製品の登録ラベルを確認し、対象作物、対象病害虫、使用時期、使用量・濃度、使用回数、被覆や換気などの使用方法を守ってください。