乾燥の確認は「無降雨日数」から土壌pFへ進める
農林水産省は茶の干ばつ対策として、敷き草による土壌水分の蒸発抑制と、用水が得られる場合の適切なかん水を挙げている。茶は土壌水分不足の影響を受け、特に幼木園では枯死に至る場合もあるため、成園を一律に回るより、幼木園、枝条更新後で再生芽を伸ばしている園、浅い土層や砂質で乾きやすい場所から確認する。敷き草の量や材料は地域の栽培指針に合わせ、排水路や作業動線を塞がないようにする。
静岡県茶業研究センターは、土壌pF2.3をかん水開始の目安としている。pFは値が高いほど植物が水を吸いにくい状態を示す。同県の点滴かん水試験では、かん水位置直下の深さ20cmで測定し、赤黄色土についてpF2.0~2.3を開始範囲としている。ただし、土性、有効土層、傾斜、根の分布で乾き方は変わる。センサー値を全国共通の絶対基準とせず、設置位置を固定して降雨、かん水量、葉や芽の状態と一緒に記録し、地域の普及指導機関の基準と照合する。
スプリンクラーと点滴では「1回量」と「間隔」が違う
静岡県のスプリンクラー基準では、夏季は赤黄色土で1回25~30mm、7日以内が目安で、黒ボク土では1回30~35mm、7~9日以内とされる。一方、同県が赤黄色土で作成した樹冠下点滴かん水の基準は、1回5~10L/㎡、間隔2~3日以内、週20L/㎡以上である。これは方式ごとの標準を示したものであり、点滴で7日分をまとめて流すための換算表ではない。点滴では一度に多く入れても濡れる範囲が広がらず、下層へ抜けやすいため、少量を短い間隔で供給することが重要になる。
点滴試験では、かん水から4日後以降に土壌水分の消費域が全層へ戻ることから、間隔を2~3日以内としている。雨があった場合は降水量を供給量として扱い、日射が少なく蒸散が抑えられる条件では間隔を延ばせるとしている。ただし、短時間の強雨は表面流去する場合があり、雨量計の数字だけで全量が根域へ入ったとは限らない。降雨後も、点滴位置直下とその外側を掘るか土壌水分計で確認し、濡れの深さと偏りを見て次回を決める。
運転時間ではなく、チューブ末端までの実流量を測る
同じ運転時間でも、吐出量は水圧、配管長、標高差、フィルターの詰まりなどで変わる。静岡県の技術資料も、現場ではかん水時間だけを把握し、水量を把握していない例があるとして、流量計による計測を求めている。まず元栓側、中間、末端の代表点で一定時間の吐出量を取り、計画した面積当たり水量になっているか確認する。運転日誌には開始・終了時刻だけでなく、流量計の前後値、対象面積、降水量も残す。
点滴後は、吐出口直下だけを見て「入った」と判断しない。数か所で表層から深さ20~40cm程度までの湿りを確認し、末端が乾いていないか、逆に直下だけ深く湿っていないかを見る。地表に水が見えなくても下層へ浸透している場合がある。斜面や土性が変わる区画は別系統として記録し、濡れ方の違いが大きければ一律の運転時間を見直す。漏水、折れ、目詰まりも同時に点検する。
朝の巡回表を「優先順位・開始条件・停止条件」で作る
盛夏の巡回表には、園地名、樹齢・更新の有無、土性、前回の雨量、pFまたは土の湿り、実流量、末端の吐出、濡れの深さを一列に並べる。最初に幼木園、更新園、乾きやすい斜面上部を確認し、その後に成園へ回る。高温時の日中作業を避けられるよう、確認と配管操作はできるだけ朝の涼しい時間帯に組み、単独作業時の連絡方法も決めておく。
開始条件だけでなく停止条件も決めたい。十分な降雨が根域まで入った、pFが開始水準より低くなった、直下だけが過湿になった、末端まで均一に出ていない、といった場合には漫然と予定運転を続けない。静岡県の数値は試験条件と土壌を伴う基準であり、そのまま全園へコピーせず、地域の茶栽培指針、水源能力、土壌条件に合わせて調整する。薬剤防除が必要と判断される場合は、対象作物・対象病害虫への登録、使用時期、回数、希釈倍数などを最新の登録ラベルで必ず確認する。