最初に、ほ場名、品種、実際の出穂日、地域指針で求められる管理終了日、用水の最終通水日を一覧にします。新潟県の2026年資料では、出穂期25日後まで土壌が濡れた状態を保つよう示されていますが、移植日、生育、品種が異なれば出穂日もそろいません。地区の代表的な出穂日や前年の日付を全筆に写すのではなく、穂が出そろった時期を各ほ場で確認し、その日を基準に管理期間を書き込みます。

この一覧で先に見つけたいのは、必要な管理期間より最終通水日が早いほ場です。該当筆は、最終かん水時に十分な水を入れて土壌水分を保つ、地域の番水順を確認する、管理受託者と落水日を調整するなどの準備が必要になります。収穫順を決めてから一斉に水を切るのではなく、「この筆はいつまで湿りを維持する必要があるか」を先に確定すると、遅い出穂のほ場を取り残しにくくなります。

飽水管理は、深い水を張り続ける管理ではありません。新潟県農業総合研究所は、浅くかん水した後、自然減水によって田面の水がなくなり、足跡に水が残る程度になったら再びかん水する管理と説明しています。中干し後は間断かん水から徐々に移し、水尻を閉めた状態で、足跡や溝の底の水がなくなり始める前を次の入水時期の目安にします。

同じ一枚でも高い場所から先に乾くため、水口付近だけを見て判断しないことが重要です。水口側、中央、水尻側など、毎回同じ観察地点を決め、田面、足跡、溝の三つを確認します。溝切りした溝と給水部がつながっているか、水尻や畦畔から漏水していないかも併せて見ます。入水日時と次回巡回時の状態を記録すれば、「何日おき」という固定間隔ではなく、そのほ場の減水速度に合わせて巡回順を変えられます。

新潟県の2026年資料は、フェーンや異常高温が予想される場合には事前に湛水するよう示しています。ただし、これは無制限の掛け流しや長期間の深水管理を意味しません。予報と地域の配水予定を確認し、必要な筆へ事前に入水したら水口を閉めます。高温・乾燥の通過後は田面と稲の状態を確認し、地域指針に沿って通常の飽水管理へ戻します。

農研機構の調査では、高温年の品質確保には、農家が意図した水管理を実行できるだけの用水確保が重要であることが示されています。一方、効果的な管理方法は地域条件で異なるとも明記されています。全員が同時に掛け流せば末端まで水が届かなくなる可能性があるため、土地改良区や水利組合の配水ルールを優先し、番水、取水可能時間、末端ほ場への到達時刻を事前に共有します。個々のほ場だけでなく、地区全体で必要期間をつなぐ視点が欠かせません。

落水前には、第一に実際の出穂日から地域指針の必要日数を経過したか、第二に田面や作土が急激に乾いていないか、第三に収穫作業までに必要な地耐力を確保できる見込みかを確認します。新潟県資料の「出穂期25日後」は有用な目安ですが、全国共通の固定値ではありません。品種、土質、暗渠、漏水程度、地域の用水事情が異なるため、都道府県や普及指導センターが当年発行する技術情報を優先してください。

記録表には、最終入水日、確認地点の足跡・溝の水、下位葉の枯れ上がり、倒伏の有無、落水決定日を残します。これにより、翌年は「収穫の何日前に切ったか」だけでなく、「出穂後何日まで湿りを保てたか」と「その時の減水速度」を比較できます。高温年ほど暦だけの一斉落水を避け、ほ場別の出穂と水利条件から順番を組み直すことが、実行可能な早期落水防止につながります。