農研機構が2024年度成果として公表した方法は、一季成り性イチゴのトレイ苗を果実予冷庫に入れ、13~15℃、暗黒条件で3日間処理するものだ。従来の間欠冷蔵は、3~4日間の冷蔵と同程度の日数の自然条件を2~3回繰り返す。温度帯は近いが、処理回数も適期も異なるため、従来の日程表から冷蔵回数だけを減らして代用することはできない。

農研機構の試験では「さぬき姫」「ゆめのか」「さちのか」で無処理より出蕾が早まる場合が確認されたが、効果には品種差と年次変動があった。2020~2022年に香川県善通寺市などで得られた結果で、主な試験苗は6月下旬に採苗した24穴トレイ、培地容量175mLの苗である。異なる地域、品種、採苗時期、ポット容量へ、そのまま一律に当てはめられる技術ではない。

3日冷蔵の効果を得やすかった開始時期は、栽培地における各品種の自然条件下での花芽分化時期のおよそ1週間前だった。善通寺市の試験から推定された開始適期は「さぬき姫」が9月6日ごろ、「ゆめのか」が9月15日以降、「さちのか」が9月21日ごろだが、これは全国共通の作業日ではない。8月下旬から9月下旬が高温の年には自然分化も遅れ、適切な処理開始日が後ろへ動く可能性があると農研機構は注意している。

7月下旬に行うべき準備は、入庫日を確定することではなく、過去数年の地域別・品種別の花芽分化確認日を集め、暫定の処理週を置くことだ。普及指導機関や産地の検鏡予定も確認し、「平年の自然分化日」「今年の検鏡結果」「処理開始候補日」「定植予定日」を同じ表にする。処理日が早すぎても遅すぎても効果を得にくいため、前年の日付だけをコピーせず、8~9月の気温経過と地域の分化確認を受けて更新する。

冷蔵処理へ回す苗は、品種、採苗日、トレイ規格、施肥履歴、遮光履歴ごとにロットを分ける。原著論文では、「女峰」で採苗時に展開葉が3~4枚あった苗は1~2枚の苗より処理効果が得られやすかった。一方、小苗も冷蔵処理によって無処理の大苗より開花が遅れたわけではない。したがって、小苗を機械的に廃棄するのではなく、大苗と混ぜずに別ロットとして入庫・出庫後の推移を記録するのが現実的だ。

トレイを密に置き続けると株当たりの受光面積が小さくなり、処理前に光合成産物を十分蓄えにくい。論文では、採苗時の展開葉が少ない苗で、冷蔵開始前3日間の日照が少ない場合に効果が不安定になる可能性が示され、寡日照時には遮光を避けることが重要とされた。7月からは遮光資材を掛けた日付だけでなく、晴天・曇雨天時の開閉、トレイの置き方、葉数の偏りを記録し、入庫直前まで苗質をそろえる材料にする。

処理条件は3日間、13~15℃、暗黒で、農研機構の試験では入出庫を正午ごろに行った。温度設定値だけで済ませず、苗を載せる上段・中央・下段、冷気吹出口付近、扉側など複数位置で温度を記録する計画を立てる。原著論文では、3日平均が16.0℃とやや高かった処理区で効果が確認できなかった事例があり、庫内の実測値を残す意味は大きい。扉の開閉時刻、入庫枚数、トレイの積み方も一緒に記録すれば、結果が揃わなかった年の検証材料になる。

収容能力も、床面積だけで決めない。原著論文では、1坪の冷蔵庫に50×36×高さ8cmの35穴トレイを1回50枚、計1,750株収容できる試算例が示されたが、実際の積載量は棚、通風、冷却能力で変わる。7月中に空トレイを使って配置を確認し、温度ロガーの位置、搬入順、停電時の連絡先、出庫後の置き場まで決める。初めて導入する地域や未検証品種では、普及指導機関と相談し、一部ロットで処理区と無処理区を設けて、出蕾日と開花日を比較できる形から始めたい。