まず暦ではなく、そのほ場の開花を確認する
かん水を検討する期間は、地域の標準的な開花予定日ではなく、実際に花が見え始めた日から考える。同じ地区でも、品種、播種日、出芽の遅れ、湿害を受けた場所によって生育段階はずれる。ほ場の入口だけで済ませず、中央部や高低差のある場所を含む数地点を歩き、開花の有無と生育の揃いを記録する。開花期以降は水分不足の影響を受けやすく、開花着莢期の乾燥は主に莢数、粒肥大期の乾燥は粒の充実に影響するためである。
一方、まだ開花前のほ場では、梅雨期の過湿を避けて根域を確保することが優先される地域もある。生育の遅い区画まで一律に水を入れず、開花済みの区画と未開花の区画を分けて記録する。地域の作型や土壌条件で管理は変わるため、最終的な時期は都道府県の栽培指針や普及指導機関の情報と照合したい。
「7日」と上位葉、土の白さを重ねる
岩手県の判定シートは、開花期以降のかん水目安として、「日中に上位葉が立ち、半分以上の葉で裏面が見えるようになった時期」または「晴天が1週間程度続き、土が白く乾燥した時期」を示している。農林水産省の資料も、開花期以降におおむね1週間以上降雨がなく、表土が白く乾燥する状態を目安としている。ただし、1週間は自動的に水を入れる期限ではない。少量の雨、土性、地下水位、根域、日射や風で乾き方が異なるため、経過日数を見回り開始の合図として使う。
見回りは日中の葉だけで終えない。新潟県は、水分ストレスを受けると最上部の葉が直立して葉裏が目立ち、それが朝夕にも見られる場合は水分ストレスを受けているとしている。日中に葉裏が目立った地点を印し、朝または夕方に再確認する。併せて、畝上の土、周囲明渠の底、暗渠排水口の排水の有無を見る。葉の反応と土・排水経路の乾きが同じ場所で重なれば、降雨日数だけよりもほ場差を捉えやすい。
水を入れる前に、水尻まで歩く
畦間かん水を行う前には、畦間と明渠がつながっているか、水尻が土や残渣で塞がれていないか、排水先へ流せるかを確認する。岩手県の手順は、明渠を接続して水尻を掘り下げ、暗渠を閉じて給水し、水尻まで水が届いたら止水して暗渠を開け、余分な水を排出する流れである。暗渠や地下水位制御設備の操作は施設ごとに異なるため、設備の取扱方法と地域の指導を確認してから行う。
給水時は水口付近の株が冠水しない流量に抑え、水が水尻まで届いた時刻を記録する。届いたら止水し、速やかに排水する。水の停滞は土壌中の酸素不足を招き、乾燥を避けるための作業が湿害の原因になり得る。大区画では一度に多量の水を流さず、流れ方を見ながら複数回に分ける。短時間でほ場全体へ行き渡らない、低い場所に水が残る、排水先が高いといったほ場では、無理に実施せず地域の普及指導機関や土地改良区へ相談する。
翌朝の確認までを一回のかん水とする
記録欄には、ほ場名、開花確認日、最後のまとまった降雨日、日中と朝夕の葉裏の見え方、土と明渠底の乾き、給水開始・水尻到達・止水・排水完了の各時刻を残す。翌朝は、水口側、中央、水尻側、低い場所を歩き、滞水がないか、葉の向きがどう変わったかを確認する。開始時刻だけでなく、水が届くまでと抜けるまでの時間を残せば、次回の流量や区画分けをほ場ごとに調整できる。
かん水後に降雨が予想される場合は、暗渠や排水口をすぐ操作できる状態にしておく。反対に、水源がない、排水が確保できない、給水に長時間を要するほ場では、今季に無理なかん水をせず、収穫後に明渠の接続、耕盤対策、保水性を含む土づくりを検討する。盛夏の大豆管理は「水を入れたか」ではなく、必要な時期に根域へ水を届け、余分な水を速やかに外へ出せたかで振り返りたい。