「大きいから熟した」とは限らない
2026年7月の千葉県情報は、果実肥大が進んでいる地域が多いことを伝えています。ただし、これは千葉県内の調査結果であり、全国一律の収穫日を示すものではありません。同じ産地でも、開花日、土壌水分、樹勢、着果量、棚内の位置などにより進み方はそろいません。果径は作業準備や収量見込みには役立ちますが、単独で収穫開始の合図にはしないことが重要です。
農研機構によると、ニホンナシの収穫判定には表面色と地色のカラーチャートが広く使われ、成熟に伴う緑色の減少を捉える地色は、表面色より熟度を正確に評価できます。赤ナシではコルク層が地色を覆うため、外から見える褐色の進みだけでは内部の成熟とずれることがあります。まず「果実が大きい」「表面が色づいた」「注文日が来た」を、それぞれ別の情報として扱います。
予測日は準備に使い、収穫判定は産地基準で行う
予測された収穫始期から、収穫人員、コンテナ、選果場所、予冷・出荷能力を逆算しておくことには大きな意味があります。一方、予測日になったことを理由に全園を一斉収穫すると、園内の熟度差を荷口へ持ち込むおそれがあります。予測日は「確認を始める日」と位置付け、最終判断は果実を見て行います。
千葉県の2025年7月の「ナシ生育情報」は、同県の「幸水」について地色と表面色のカラーチャート値2.5~3を目安としながら、果皮の着色程度と果肉の熟度も確認するよう示しています。この数値を他県や別の栽培条件へそのまま移すのではなく、各産地の出荷規格、品種別カラーチャート、普及指導機関の最新情報を優先してください。数字だけを拾わず、「表面色と地色を併用し、果肉も確かめる」という判断の組み立てを取り入れます。
試し取りは園全体を混ぜず、区画ごとに比べる
収穫候補の園を、品種、開花の早晩、樹勢、土壌条件などで管理区画に分けます。各区画では、棚の外側など色が進みやすい場所だけに偏らないよう代表果を選び、同じ時間帯、同じ日陰条件、同じ判定者で表面色を確認します。農研機構は、目視のカラーチャート判定には調査者や光環境による誤差が生じると説明しています。直射日光下と棚下を行き来して判定せず、見る条件をそろえることが記録の比較可能性を高めます。
地色の確認で果皮を傷つける場合は、出荷果ではなく試し取り果を使います。その果実を切り、産地で用いている方法に従って果肉の硬さや食味などの熟度も確認します。表面色が進んでいても地色や果肉が追いつかない区画、反対に表面色の割に果肉が進む区画があれば、園全体を一括して扱わず、区画別に収穫順を組み替えます。異常が疑われる果実は自己判断で原因を決めず、普及指導機関や選果場へ相談してください。
毎朝の記録を、収穫順と荷口の分離につなげる
記録表には日付、園・区画、樹や棚内のおおよその位置、表面色、地色、果肉の確認結果、収穫の可否を残します。「収穫」「翌日再確認」「数日後に再確認」のように区画を分け、成熟が進んだ区画から作業班を入れます。記録があれば、昨日と今日の変化を比べられ、担当者が替わっても出荷日だけに引っ張られにくくなります。
収穫開始後も試し取りを終わりにせず、荷口ごとに確認を続けます。盆前需要へ合わせることと、適熟果をそろえることは別の仕事です。出荷予定表は物流を整える道具、表面色・地色・果肉の記録は収穫する果実を決める道具として分けることで、早取りと採り遅れの双方を抑えやすくなります。