舎内温度だけで母豚の負担を決めない
農林水産省の「豚の飼養管理に関する技術的な指針」は、豚の適温域を発育段階などによって異なるとした上で、10~25℃を目安としている。同時に、快適性は温度だけでなく、日射、湿度、風速、換気方法、飼養密度、床の構造、品種、週齢、ボディコンディションなどの影響を受けるとしている。したがって、事務所や豚舎中央の温度計だけで運転を決めず、母豚が横臥する高さと位置で環境を確認する必要がある。
巡回では、呼吸数の変化やあえぎ呼吸、横臥姿勢、採食・飲水量の変化、無関心な行動などを豚房単位で見る。これらは暑熱だけに特有の所見ではないため、観察結果だけで原因を決めつけない。健康悪化の兆候がある場合は速やかに管理責任者へ共有し、農場の手順に従って獣医師に相談する。
屋根、豚房、母豚を同じ時刻に測る
千葉県畜産総合研究センターは、分娩豚舎で園芸用スプリンクラーによる屋根散水と換気扇を組み合わせた試験を行った。試験区では豚舎内、屋根内側、豚房壁面の温度と舎内湿度が対照区より低く、特に12時と16時の屋根内側温度で大きな差が確認された。母豚の呼吸数も12時と16時に対照区より2~3割程度少なかった。これは同センターの条件下で得られた結果であり、屋根材、散水量、換気方式、建物の向きが異なる農場で同じ数値を保証するものではない。
自農場では、散水前または朝、正午前後、午後の高温時間帯に、外気、屋根内側、母豚の高さの温湿度と母豚の呼吸状態を同じ記録票に残す。換気扇側だけでなく、吸気側、豚舎中央、端の豚房も回り、風が届きにくい場所や熱が残る場所を分けて記録する。設備の追加前後を同じ場所、同じ時刻で比べれば、屋根を冷やした効果が母豚まで届いているか判断しやすい。
換気と給水を別々に点検する
換気は舎内の熱、湿気、ほこり、ガスを外へ出す役割を持ち、単に母豚へ風を当てることだけが目的ではない。吸気口の詰まり、ファンの汚れ、ベルトやシャッターの不調があれば、ファンが回っていても豚舎全体の空気は入れ替わりにくい。屋根散水を行う場合は、漏水が飼料や電気設備へ達していないか、排水が吸気口周辺に滞留していないかも確認する。点検や補修は必ず電源を安全に遮断し、メーカーの手順に従う。
水分要求量は温度、湿度、体重、飼料成分などで変わる。農林水産省の指針は、新鮮で飲用に適した十分な水を常時給与し、給水器を定期的に点検・清掃するよう求めている。盛夏は元栓や圧力計を見るだけでなく、母豚が使う給水器の末端で実際に水が出るか、水が熱くなっていないか、漏れや詰まりがないかを豚房ごとに確認する。複数頭飼養では、競合によって一部の豚が水へ近づきにくくなっていないかも観察する。
日報と緊急時手順を一枚につなぐ
農林水産省の指針では、豚の観察を少なくとも1日1回行い、暑熱時には頻度を増やすとしている。毎日の記録項目には、健康状態、採食状況、水が適切に給与されているか、最高・最低温度、湿度などが挙げられている。盛夏の日報には、屋根散水と換気扇の運転時間、給水末端の確認結果、呼吸状態が変化した豚房番号も加えると、翌日の運転調整や設備不良の発見に使いやすい。
自動給水や強制換気が止まると、高温時は短時間でも飼養環境が悪化し得る。停電、断水、ポンプ停止を想定し、警報の受信者、発電機で優先する設備、代替取水方法、燃料とホースの保管場所、獣医師や設備業者への連絡順を文書化して共有する。発電機や予備システムは、実際に負荷を接続できるかを含め、メーカーの推奨頻度で点検する。夜間運転を延長する場合も一律設定にせず、豚房ごとの温湿度と母豚の状態を確認して決める。