台風期の点検は、気象情報を見てから一斉に始めるのではなく、平時の保守管理に組み込む。農林水産省は、被覆材のたるみや破れ、ハウスバンドと留め金具の緩み、基礎部・接続部・谷樋・柱の腐食やさびなどを確認項目に挙げている。千葉県も、生産者が自ら現場確認できるチェックシートと、保守管理・補強のマニュアルを公開している。まず各棟を歩き、「すぐ直す」「部材を注文する」「施工業者へ相談する」に分け、未処置箇所を残さない形で記録する。

接近が予想されたら、気象庁の最新情報と施設の仕様を照合し、誰が、どの棟を、何時まで確認するかを朝の段階で決める。強風や大雨が始まる時刻から逆算し、屋外作業を打ち切る時刻も共有する。警報や注意報は作業を始める合図ではなく、残作業を絞り、安全なうちに終了するための情報として扱いたい。

最初に見るのは、風が吹き込みやすい出入口、サイド部、谷部、換気部、被覆材の隙間である。フィルムの小さな破れやたるみ、戸締まり不良、留め金具の緩みを棟番号と場所が分かる形で記録し、補修後にもう一度確認する。斜材などの補強は、事前に準備していたものを施設の設計や施工者の指示に従って設置する。接近直前に、構造を確かめず独自の補強を追加するのは避ける。

ハウス周辺では、空箱、資材、シートなど飛来物になり得る物を片付け、燃料タンクやガスボンベの固定も確かめる。換気扇を備えた施設について農林水産省は、排気によるハウス内の減圧も確認項目としている。ただし、設備の運転方法や閉鎖手順は施設ごとに異なるため、施工者やメーカーの手順を事前に確認し、停電後も惰性で動くと思い込まないことが重要だ。

豪雨対策は、ハウス内だけを見ても完了しない。施設周辺の排水溝、谷樋、縦樋から泥、落ち葉、ごみを除き、水がどこへ流れるかを下流側まで確認する。排水口の先が詰まっていれば、樋を清掃しても水は抜けない。低い場所や過去に水が滞留した場所は、棟ごとの点検票に印を付け、風対策とは別に完了確認を行う。

停電への備えでは、農林水産省が、かん水用水の貯水、自動換気や遮光カーテンを手動で動かすための操作器具と足場の準備、非常用電源がある場合の事前動作確認を挙げている。「停電したら考える」のではなく、換気、遮光、かん水、養液栽培装置、環境制御装置の優先順位を決め、手動操作の担当者と器具の保管場所を一枚にまとめる。実際の操作は、各設備の取扱説明書と安全手順に従う。

農林水産省は、ハウスの耐風速を上回る強風が予想される場合、あらかじめ被覆フィルムを除去するよう示している。ただし、耐風速や除去の可否は施設の構造、経年状態、被覆方法によって異なる。施設の仕様書、施工者、地域の普及指導機関などに平時から確認し、「どの情報を基に、誰が除去を決めるか」を定めておく。フィルムを切断して除去する場合は、園芸施設共済の支払いに関係するため、事前に農業共済組合等へ相談する。

風雨が強まってからの戸締まり、屋根上作業、排水路の確認は行わない。台風通過後も、まず周囲と施設の安全を確認し、安全が確保された時点で被覆材、支柱、防虫ネット、各種制御装置を点検する。次回へ向けて、破損箇所だけでなく、点検に時間がかかった場所、届かなかった器具、手動操作で迷った設備も記録する。この記録を平時の修繕と次の接近前点検につなげることで、直前作業を一つずつ減らせる。