アラートなしを「作業してよい日」と読まない
熱中症警戒アラートは、府県予報区などの地域内にある観測地点のいずれかで日最高WBGTが33以上になると予測された場合に発表される。発表は前日17時ごろと当日5時ごろで、広い地域に危険への気づきを促す情報である。気象庁も、アラートが発表されていなくても、周辺環境、行動内容、体調によって熱中症が起こり得るとしている。したがって、アラートは作業計画を見直す合図にはなるが、発表がないことを通常作業の許可証にはできない。
朝は環境省の地点別WBGT予測を確認したうえで、直射日光下の畑、照り返しの強い選果場前、風が抜けないハウスや倉庫など、実際に人が働く場所を測る。厚生労働省の2026年ガイドラインは、地域を代表するWBGTでは個々の作業場所や作業内容が反映されず、参考値が現場の実測値より低くなる場合があると注意している。屋外や放射熱のある場所では、黒球を備えたJIS Z 8504またはJIS B 7922適合の指数計を選び、作業場所と時間帯を変えて確認する。
数値は服装と作業負荷を重ねて読む
2025年6月施行の改正労働安全衛生規則では、事業者が対応体制と手順を整える対象の目安として、WBGT28以上または気温31度以上の場所で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業が示されている。雇用する作業者がいる経営体では、該当する作業について報告体制、作業離脱、身体冷却、必要な受診や搬送の手順を事前に定め、作業者へ周知する必要がある。
ただし、28という一つの数値だけで線を引かない。厚生労働省のガイドラインでは、把握したWBGTに着衣による補正を加え、身体作業強度や暑熱順化の状態も考慮してリスクを評価するよう示している。カッパ、防護具、通気性の低い服を着る作業、重量物の運搬、休み明けの作業者などは同じWBGTでも負担が異なる。朝の計画表には、作業場所ごとのWBGTに加えて、服装、作業負荷、休憩場所、作業の短縮・変更・中止条件を書き込む。
「何分ごと」より先に、連絡が途切れた後を決める
厚生労働省は、責任者による巡視、二人以上で互いの状態を確かめるバディ制、責任者と作業者の双方向の定期連絡などを早期発見の方法として挙げている。連絡間隔に全国一律の正解はない。WBGT、作業の重さ、ほ場までの距離、作業者の状態を踏まえ、農場ごとに時刻を決めることが重要である。「適宜連絡」ではなく、連絡予定時刻、連絡を受ける人、使う電話番号を当日の作業表に記す。
さらに、予定時刻に応答がなかった場合の行動を決める。再連絡する人、現地確認へ向かう人、ほ場の位置情報、農道から作業場所までの進入経路を共有しておけば、一人作業を単なる自己申告にしないで済む。ウェアラブル機器を使う場合も、機器だけでは作業者の状態を正確に把握できないことがあるため、電話、巡視、バディ制などと組み合わせる。家族だけの作業でも、帰宅予定時刻と連絡不能時の確認手順を家に残しておく。
異常時カードは「離脱・冷却・連絡・搬送」の順で作る
ふらつき、大量の発汗、けいれん、めまい、頭痛、普段と違う受け答えなどが見られたら、現場で病名や重症度を判断しようとせず、熱中症の疑いとして作業から離し、涼しい場所で身体を冷却して責任者へ連絡する。本人が「大丈夫」と言っても、一人にせず、あらかじめ定めた手順に従う。自力で水分を取れない、受け答えがおかしい、状態が改善しないなどの場合は、ためらわず救急隊や医療機関へつなぐ。水分・塩分の取り方に持病や服薬上の制限がある人は、平時に主治医へ確認しておく。
カードには119番だけでなく、農場の住所、ほ場番号、進入口の目印、責任者と代理者の電話番号、搬送先候補の名称・住所・電話番号を記載する。冷却場所、飲料、氷や濡れタオルなどの保管場所も明記し、車両や休憩所に置く。症状は帰宅後に悪化する場合もあるため、作業を終えた後の連絡方法も決めておく。毎朝の確認は、WBGTの数値を読むだけで終わらせず、このカードを誰が携帯しているかまで確かめて完了とする。