草を見る前に、作業区域を見る
農林水産省が2024年8月に出した注意喚起によると、農作業中の刈払機による死亡事故者数は毎年10人前後で推移している。刈払機は日常的な機械だからこそ、短時間の作業や慣れた畦畔でも準備を省かないことが重要だ。作業開始前にほ場を歩き、石、空き缶、針金、木の枝、切り株など、刈刃の破損や飛散、キックバックにつながる障害物を取り除く。草に隠れて撤去できない物は、杭などで位置を明確にして迂回する。
道路、住宅、駐車車両、水路との位置関係も確認し、飛散物を人や物へ向けない作業方向を決める。農研機構は、周囲の人や共同作業者と15メートル以上の距離を取るよう示している。距離を目測だけに任せず、ほ場入口や通路に立入禁止の表示を置き、通行人が現れたら停止する区域として共有すると運用しやすい。見通しの悪い法面では、見張り役を置くことも検討したい。
始業点検を「機械・装備・身体」の三つに分ける
機械はエンジンを停止した状態で、刈刃のひび、欠け、摩耗、固定状態、各部のねじの緩みを点検する。飛散物防護カバーを所定の位置に取り付け、停止スイッチと緊急離脱装置が使えることも確かめる。防護カバーを後方へずらしたり外したり、スロットルレバーを針金などで固定したりしてはいけない。刈刃の交換方法や適合部品は、必ず機種ごとの取扱説明書に従う。
装備は、裾や袖口が締まった作業服、手袋、安全靴、ヘルメット、保護めがねまたはフェイスシールド、イヤーマフ、すね当てを基本にする。肩掛けバンドは、通常の姿勢で刈刃が適切な高さになるよう調整し、非常時に機械を切り離す操作を作業前に試す。体調不良や強い疲労がある場合、雨で斜面が滑りやすい場合は、予定を優先せず延期する。点検結果を日付と機体番号とともに残せば、共同利用機でも不具合を引き継ぎやすい。
回転中に近づかない、触らない、話しかけない
始動時は刈刃を地面から浮かせ、給油した場所から3メートル以上離れる。作業中は刈刃を膝より下に保ち、立木、石、切り株などの硬い物へ接触させない。草が巻き付いたとき、異音や異常な振動を感じたとき、刈刃を障害物へ当てたときは、エンジンを止めて刈刃の停止を確認してから点検する。回転が落ちるまでの惰性もあるため、停止操作の直後に刃へ手を出さない。
斜面では滑り止めのある靴を使い、一歩ずつ足場を確かめながら等高線方向へ進む。複数人が斜面の上下に並ぶと、転倒や飛散物が下方の作業者を巻き込むおそれがあるため、上下配置を避け、15メートル以上の間隔を維持する。高い草は無理に一度で刈らず、上下二段に分ける。枝やつるは、機械を停止したうえで作業に適した別の道具を使って事前に処理する。
合図と休止を農場共通のルールにする
稼働中の作業者へ後ろから近づいたり、肩をたたいたりすると、振り向いた刈刃に巻き込まれる危険がある。作業前に笛や鏡などの合図を決め、15メートル以上離れた前方から知らせる。合図を受けた作業者は、エンジンを停止してから会話する。通行人、車両、家畜が区域へ入った場合も同じく即時停止とし、誰でも作業中断を指示できるようにしておく。
農研機構の安全ポイントは、振動への対策として1回の連続作業を30分以内、その後に5分以上休止し、1日の使用時間を2時間以下にする作業計画を示している。休止は給油や刈草整理と混同せず、機械から手を離す時間として確保する。終了後はエンジンを停止し、刈刃カバーを装着して運搬する。「区域確認、始業点検、15メートル、停止して対処、停止して会話」の五項目を掲示すれば、家族や季節雇用者にも同じ基準を伝えられる。