乳牛の暑熱負担は気温だけで決まらず、湿度、日射、牛体周辺の風、泌乳量などにも左右されます。農研機構は、高温多湿で飼料摂取量や乳量、乳成分などが低下し得ることを示しています。そこで朝夕の巡回では、牛舎内の温度・湿度に加え、呼吸が速い牛の増加、立っている牛の偏り、日陰や送風機の前への集中、残飼、乳量の推移を同じ時刻に記録します。これらは原因を断定する診断ではなく、いつ、どの区画で負担が強まるかを見つける観察項目です。

記録は「朝の搾乳後」「日中の高温時」「夕方の給餌後」など時刻を固定し、牛舎を待機場、飼槽、牛床、通路、乾乳牛群に分けます。牛群平均だけにすると局所的な風のよどみや飲水競合を見落とすため、区画別に丸・三角・数字で残す簡単な様式が実用的です。急激な状態悪化、起立困難、著しく速い呼吸など通常と明らかに異なる状態を認めた場合は、記録だけで済ませず、獣医師や地域の家畜保健衛生所などへ速やかに相談します。

送風機は、羽根やガードにほこりが付着して風量が落ちていないか、風向きを飼槽や牛床の牛体に合わせられているか、柱やカーテン、資材で流れを遮っていないかを点検します。細いテープなどで気流の向きを確認する場合は、牛や回転部に触れない位置へ一時的に置き、巻き込みが起きないよう作業後に必ず撤去します。可能なら風速計を牛の肩付近や横臥時の高さで使い、ファン直下だけでなく列の中間と末端も比較します。

農研機構は、ミストが高温多湿条件で湿度をさらに高める場合があると説明しています。散水・散霧は単独で増やすのではなく、十分な送風と排気、床や飼料を過度に濡らさない運転、ノズルの詰まりや漏れの確認を一体で行います。夕方になっても床が湿ったまま、牛舎内に蒸し暑さが残る場合は、噴霧量だけでなく換気経路と運転時間を見直す材料になります。電気設備や高所の清掃・調整は電源を安全に停止し、無理に自分で行わず専門業者へ依頼します。

北海道の釧路農業改良普及センターは、泌乳牛の飲水量を1日平均75~180リットル程度とし、搾乳後と採食後に飲水が集中すると説明しています。同資料では、水槽やウォーターカップの吐水量の目安を20秒で4~6リットルとしています。これは地域資料に示された点検の目安なので、設備仕様、牛群規模、水圧条件も踏まえ、まず各飲水器の20秒間の吐水量を同じ容器で測って差を探します。

重要なのは、水使用の少ない時間だけで合格にしないことです。搾乳後、給餌後、洗浄作業と重なる時間にも、末端の飲水器まで回復が遅くないか、水槽が空に近づかないか、牛が長く待っていないかを観察します。水槽のぬめりや飼料片を清掃し、浮き球、バルブ、配管の漏れも確認します。臨時水槽を置く場合は、牛の流れを妨げず、転倒や汚水の滞留を起こさず、常に清浄な水を補給できる場所を選びます。

点検表には飲水器番号、20秒吐水量、清掃日、漏れ、搾乳後の混雑を書きます。吐水量の小さい器具が牛群のよく使う場所に集中していれば、清掃や修理、配管・水圧の確認を優先できます。全頭数から一律に必要水槽数を決めるのではなく、牛群構成、動線、メーカー仕様を確認し、地域の普及指導員や設備業者と改善案を詰めます。

釧路農業改良普及センターは、暑熱期には涼しくなる夕方から夜の給与量を増やすこと、新しい飼料の給与前に残飼を除き、エサ寄せ回数を増やすことを挙げています。まず飼料設計を大きく変えず、朝、日中、夕方の残飼量や飼槽の発熱・変敗の有無、エサ寄せ後の採食状況を記録します。給与内容、ミネラルや重曹などの変更は、乾乳牛を含む群ごとの条件が異なるため、自己判断で一律に増減せず、飼料設計を担当する専門家や獣医師と確認します。

三日間は、温度・湿度、区画別の牛の様子、風の到達、吐水量、搾乳後の飲水混雑、残飼、乳量を同じ表に並べます。「午後だけ末端牛床の風が弱い」「搾乳後だけ水槽の回復が遅い」「夕方のエサ寄せ後は採食が戻る」のように時間と場所が結び付けば、ファン角度、障害物、清掃時刻、給餌・エサ寄せ時刻など、費用の小さい改善から試せます。変更は一度に一、二項目とし、翌日以降を同じ指標で比較すると効果を判断しやすくなります。

設備改修が必要な場合、農林水産省は令和7年度補正予算による生乳暑熱対応推進緊急対策として、乳用牛の飼養環境改善に必要な暑熱対策資材・機器の導入支援を案内しています。対象、申請期間、自己負担などは地域や事業によって異なるため、農林水産省の最新情報を確認したうえで、自治体、農協、関係団体へ相談してください。日々の測定記録は、導入する設備の能力や設置場所を説明する材料にもなります。