最初に「地下かんがい」と「畝間かん水」を分ける
農林水産省中国四国農政局の南周防地区向け資料は、地下かんがいについて、20mm/日以上のまとまった雨がない期間が7日程度続くことを実施判断の目安としています。一方、農林水産省が掲載する大豆の重点技術対策では、畝間かん水の目安を、開花期から登熟期に10日以上降雨がない場合、または日中に葉の反転が50%以上見られる場合としています。対象地域とかん水方式が異なるため、「7日」と「10日」を全国共通の数字として混ぜて使わないことが重要です。
まず圃場台帳に、開花始めの日、かん水方式、暗きょや地下水位制御設備の有無、用水を入れた後の排水経路を書き出します。そのうえで、地域の栽培指針や普及指導機関の情報を優先し、雨のない日数を点検開始の合図として利用します。開花日の異なる品種や播種日の違う圃場を、一斉に同じ日に処理しないようにします。
雨量表だけで終わらせず、畝の30cm付近を確かめる
南周防地区の地下かんがい資料では、畝上から約30cmの深さの土に湿り気がない状態を、水分不足の判断材料にしています。また、葉が内側に巻いて圃場が白っぽく見える状態や、土に亀裂が生じた状態になる前の水分補給を求めています。葉の変化は巡回時の手掛かりになりますが、見た目だけで決めず、土を確認することが欠かせません。
試掘は圃場の入口だけでなく、給水側、中央、排水側など複数地点で行います。「深さ約30cmに湿りがあるか」「硬く締まっていないか」「地点間で差があるか」を同じ時刻帯に記録すると、翌年以降も比較できます。南周防資料の20mmという雨量区分は同地区の地下かんがい向け判断基準なので、土質や設備が異なる圃場では、地域基準と現地の湿り方を併用してください。
水を入れる前に、排水口と次の雨を確認する
農研機構は、日本の大豆の多くが水田転換畑で栽培されており、乾燥ストレスの軽減と同時に湿害を防ぐ必要があると説明しています。畝間かん水では、長時間の滞水が湿害や根粒菌の減少を招くため、圃場全体へ速やかに水を行き渡らせ、滞水時間をできるだけ短くすることが基本です。給水前に明きょの詰まり、畝間と排水口の接続、排水路の水位を点検します。
地下水位制御設備を使う場合も、設定水位を上げたまま放置しません。南周防地区の資料では、作土が湿潤状態になった後は地下水位を下げて排水性を確保し、降雨が予想される場合は事前に排水できる状態へ戻すよう注意しています。設備の設定値や給水時間は圃場面積、畝高、土壌の透水性で変わるため、設備の取扱説明書と地域の指導内容に従います。短時間強雨の予報があるときは、給水を急ぐより排水能力の確保を優先します。
「入れた日」ではなく、入れる前後の変化を残す
記録欄には、開花日、直近のまとまった降雨日、試掘地点ごとの湿り、葉の反転の有無、給水開始・終了時刻、排水完了を確認した時刻、給水後の降雨を残します。翌日に同じ地点を試掘し、水が中央や排水側まで届いたか、過湿な場所が残っていないかも確認します。これにより、同じ圃場で次回必要になる給水時間を絞り込めます。
農研機構の「大豆灌水支援システム」は、気象、土壌、栽培情報から乾燥ストレスを推定する仕組みです。このような支援情報を利用する場合も、アラートを自動的な給水命令にはせず、現地の土壌水分、排水状態、降雨予報を確認するための巡回合図として扱うのが安全です。まずは開花期の圃場を一覧にし、方式別に「雨量確認→試掘→排水口確認→給水→翌日確認」の順序を固定しましょう。