色だけでなく、満開日からの位置を確かめる
農林水産省の令和6年地球温暖化影響調査レポートでは、ブドウの着色不良・着色遅延が全国的に報告され、西日本では4~5割の地域で影響がみられました。同レポートは、主な発生要因を果実肥大期から収穫期にかけての高温としています。色づきの遅れは珍しい現象ではなくなっていますが、個々の園で見える色だけから原因を断定することはできません。
農研機構が開発した温暖化被害予測システムは、気象予測だけでなく、圃場の位置や満開日などの発育情報を用います。「巨峰」の着色不良については満開50日後、収穫のおよそ40日前に予測する設計です。この数値を他品種へ一律に当てはめるのではなく、まず園地ごとの満開日、品種、作型、現在の生育段階を作業記録に並べます。着色を待つだけでなく、対策を検討できる時期にいるかを確認するためです。
棚が暗いか、果房が焼けるほど明るいかを分ける
棚下の定点を数か所決め、同じ向き、同じ高さから朝と日射の強い時間帯に写真を撮ります。記録するのは、棚全体の葉の重なり、再伸長した新梢や副梢、果房に直射が当たる範囲、傘や袋の状態です。「暗い」「明るい」という印象だけでなく、前回写真と比べれば、どの枝が新たに棚を覆ったか、前の作業で果房が急に露出したかを追えます。
山梨県の「ぶどう棚の明るさ計測アプリ」は、露地・短梢剪定の「シャインマスカット」を対象に、棚下写真からLAIの近似値を求める仕組みです。同県は、ベレーゾン終了後の目標LAIを4.0~4.5とする一方、極端な新梢切除は日焼けや縮果症につながる可能性があるため、段階的に行うよう注意しています。この数値は対象品種と仕立てに限った目安ですが、棚の明るさを定点で測り、作業後も再測定する考え方は他園でも応用できます。地域や品種に合う目標値は、産地の栽培指針や普及指導機関で確認してください。
摘葉は品種差を無視せず、小区画で段階的に行う
暗い部分が確認できても、園全体を一度に摘葉しません。まず、果房を越えて再伸長した新梢や、局所的に棚を塞ぐ副梢など、原因が写真で確認できた部分を小区画で調整します。作業前後の写真を残し、果房への直射が急増していないかをその日のうちに見直します。すでに明るい区画では葉数を確保し、誘引を見直します。直射を受ける果房は、地域の指針に沿って傘などの遮光方法を検討します。
摘葉の効果は品種によって同じではありません。山梨県果樹試験場の成果情報では、赤色系品種は着色始めの1~2週間後に果房上部の葉を1~2枚除く処理で着色が向上しましたが、黒色系の「ピオーネ」では同じ処理による着色向上効果が認められませんでした。また、過剰な摘葉は日焼けを助長し、高温条件では段階的に作業するよう示されています。したがって、「色が遅いから葉を取る」という一律の判断を避け、品種、着色開始時期、糖度や着果量、直射の有無をそろえて確認します。
翌日の作業量は、気象情報と観察記録で決める
毎日の作業表には、満開後日数、棚下の定点写真、直射を受ける果房の有無、着果量の見直し結果、実施した新梢管理の範囲を残します。代表果房の色だけでなく、産地で定める方法に従って糖度や酸度、果粒の状態も確認します。変色やしおれなど気になる状態があっても、この記録だけで障害を断定せず、普及指導機関やJAの技術担当者へ写真と管理履歴を示して相談してください。
気象庁の2週間気温予報は毎日更新され、早期天候情報は、その地域・時期として10年に1度程度の著しい高温となる可能性が高まった場合に発表されます。高温の見通しが続くときは、一度に棚を明るくする作業を広げず、処理区の翌日確認を挟みます。植物成長調整剤などを利用する場合も、試験結果だけで判断せず、対象作物・品種、使用時期、希釈方法、使用回数を含む最新の農薬登録と製品ラベルを必ず確認し、地域の指導に従ってください。