WBGT28度・気温31度を「準備開始の線」にする
2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則では、WBGTが28度以上または気温が31度以上の場所で、連続1時間以上または1日4時間を超えると見込まれる作業が対象です。臨時作業や複数の場所を移動する作業も、条件を満たすと見込まれれば含まれます。対象となる作業を行う事業者には、異常を報告する体制と、作業離脱・身体冷却・必要に応じた受診や搬送などの手順をあらかじめ整え、作業者へ周知することが求められます。
まず作業予定表に、炎天下での収穫や草取り、ハウス内作業、選果場の高温区画などを記入し、作業場所でWBGTまたは気温を確認します。通風のよい屋外では予報や環境省の情報を判断材料にできる場合もありますが、ハウスや畜舎、照り返しの強い場所は外の観測値と環境が異なるため、現場で測る運用が基本です。測定時刻、場所、値を簡単に残せば、翌日の開始時刻や人員配置も決めやすくなります。
この数値は「下回れば必ず安全」という境界ではありません。作業強度、体調、着衣によって危険性は変わります。雨具や防護性の高い服を着る作業、暑さに慣れていない新人や休み明けの作業者がいる日は、基準に達する前から作業時間の短縮、涼しい場所への変更、休憩の追加を検討します。
報告先は「担当者名」と「つながらない時」まで決める
対応表の最上段には、熱中症担当者の氏名と電話番号、その人につながらない場合の第2連絡先を書きます。担当者は作業中、随時報告を受けられる状態にします。事務所への掲示だけでは、離れたほ場や朝礼に参加しない作業者へ届きません。掲示、携帯カード、グループ連絡、朝礼での読み合わせを組み合わせ、短期雇用者や同じ場所で働く家族にも共有します。
早期発見には、担当者の巡回、2人で互いの状態を見るバディ制、担当者との定期連絡などが使えます。単独作業を避けられない場合は、開始時、休憩時、終了時など農場で決めた時点に本人から連絡させ、連絡がない場合に誰が確認へ向かうかも決めておきます。ウェアラブル機器を使う場合も、その表示だけに頼らず、声かけや連絡と組み合わせます。
連絡内容は複雑にしません。「本人が不調を申し出た」「同僚の様子がいつもと違う」のどちらでも報告する、と統一します。現場で病名や重症度を判断させず、疑った段階で手順を開始できる言い方にしておくことが、対応の遅れを防ぎます。
「離脱・冷却・見守り・連絡」の順を固定する
異常の申告や発見があったら、まず作業を中断させ、涼しい休憩場所へ移動します。衣服を緩め、水をかける、冷たい物品や送風設備を使うなど、農場で実施できる身体冷却を始めます。その間は容態が変化する可能性があるため、疑いのある作業者を一人にせず、別の人が見守ります。農機や収穫物の片付けを優先して、本人だけを休ませる運用は避けます。
意識がもうろうとしている、呼びかけへの返答がおかしい場合は、農林水産省の農業者向け資料に従い、直ちに119番へ連絡します。判断に迷う場合は放置せず、地域で利用できる救急相談窓口や医療機関へ速やかに相談します。これは現場で診断するためではなく、専門家へ早くつなぐための手順です。
対応表には、119番、近隣医療機関の名称・電話番号・所在地、ほ場の住所または救急車との合流地点を記載します。土地勘のない作業者でも説明できるよう、ほ場番号だけでなく住所や目印を添えます。救急要請する人、入口まで誘導する人、本人に付き添う人も先に割り振っておけば、繁忙時でも役割が重なりません。
朝礼と終業確認で手順を生きたものにする
朝礼では、当日の作業場所、WBGTまたは気温、作業時間、報告先、涼しい休憩場所、飲料と冷却用品の位置を確認します。睡眠不足、下痢、発熱などの体調不良がないか本人に申告してもらい、不調があれば軽い作業への変更や中止を判断します。作業中は値を測り直し、高くなったら連続作業を短くし、休憩を増やします。水分と塩分の摂取は本人任せにせず、休憩と一緒に確認できる段取りにします。塩分摂取を制限されている人は、主治医などの指示に従います。
終業時には、全員が戻ったことと体調を確認します。厚生労働省は、帰宅後を含め、時間が経ってから症状が悪化する場合があるため、回復の判断を慎重に行うよう示しています。不調があった人には帰宅後の急変時の連絡方法を伝え、農場側から確認する担当者と時点も決めます。
最後にA4判の対応表を実際に使って、担当者へ電話がつながるか、休憩場所まで何分かかるか、救急車との合流地点を説明できるかを確認します。従業員のいない家族経営でも、この流れを連絡カードとして携帯すれば、単独作業時の連絡遅れを減らす安全策になります。