高温登熟は「出穂後だけ」の問題ではない
農林水産省が2026年3月に公表した令和7年地球温暖化影響調査レポート速報では、出穂期以降の高温による白未熟粒について、全国で作付面積の3割から4割に影響がみられたと報告された。都道府県から報告された対策では、高温耐性品種の導入に加え、肥培管理と水管理が効果のあった取組として挙げられている。高温耐性品種だけに頼らず、その年の生育に合わせて稲体の活力を保つ必要があることを示す結果である。
農林水産省の農業技術の基本指針は、高温時の管理として、葉色を見た生育診断に基づく適期・適量の穂肥、出穂後の通水、収穫前の早期落水防止を示している。基肥一発型の肥料を使ったほ場でも、生育・栄養診断によって追肥の必要性を判断するとしている点が重要だ。暦日だけで作業日を固定せず、品種、移植日、生育進度が異なるほ場を分けて見ることが出発点になる。
まず、ほ場ごとの「現在地」をそろえる
最初に、品種、移植日、幼穂の状態、葉色、草丈、予想出穂日をほ場ごとに一枚の表へ記録する。幼穂形成期や出穂期は天候で前後するため、前年の日付や地域の平均日だけで穂肥時期を決めない。数株を取り、地域の普及資料が示す方法で幼穂長と葉色を確認する。倒伏しやすい生育、葉色の濃いほ場、地力の低いほ場では判断が異なるので、数値を全国共通の基準として流用せず、都道府県や普及指導センター、JAが品種別に示す基準と照合したい。
新潟県巻農業普及指導センターが2026年7月2日に公表した資料も、幼穂長、草丈、葉色を確かめて穂肥の時期と量を決定するよう求めている。同資料に掲載されたSPAD値や施肥量は、対象地域の品種、土壌、作型を前提とする地域基準であり、そのまま他県へ当てはめる数字ではない。一方、「基肥一発でも葉色を確認する」「気象予報と葉色の推移を合わせて後期栄養を判断する」という手順は、他地域でも地域基準を使って応用できる。
水管理は早期落水を避け、用水計画まで確認する
幼穂形成期以降は、根の活力と登熟を支えるため、土壌を長時間乾かさない管理を組み立てる。農林水産省は出穂後の通水と収穫前の早期落水防止を基本としている。巻農業普及指導センターの地域資料では、中干し後に間断かん水から飽水管理へ移り、幼穂形成期以降、出穂25日後まで飽水管理を続けるよう示している。この「25日」は新潟県内の当該地域資料の目安であり、用水条件、土質、品種、収穫作業を踏まえて地元の指導基準を優先する。
実務では、水口から遠い場所や漏水しやすい場所も歩いて確認し、田面の高低差、畦畔や水尻からの漏水、用水の終了日を記録する。フェーンや異常高温が予想される地域では、地域資料や水利組合の連絡に従って事前の入水可否を確認する。渇水時に各戸が同時に取水すると末端まで届かないことがあるため、番水や通水時間の調整は土地改良区、水利組合、地域の関係者と早めに共有する。事故防止のため、増水した水路や夜間の水口確認には単独で近づかない。
気象情報を作業予定と収穫準備へつなぐ
気象庁の農業向け「高温に関連のある情報」では、週間予報、2週間気温予報、早期天候情報、1か月予報を時間軸別に確認できる。月曜日など確認日を決め、ほ場別の予想出穂日と重ねて記録すると、高温が出穂前の穂肥判断期に当たるのか、出穂後の登熟初期に当たるのかを区別しやすい。予報は更新されるので、一度見た情報だけで施肥や水管理を固定せず、最新の地域情報へ更新する。
高温では登熟期間が短くなり、収穫適期が平年より早まる場合がある。出穂日をほ場別に記録し、地域が品種別に示す積算気温の目安と籾の黄化状況を併用して刈取時期を判断する。コンバイン、乾燥機、籾運搬、委託収穫の日程は早めに点検し、早生・中生・晩生の順序変更にも対応できるようにしておく。白未熟粒や胴割粒は外観だけで予測しにくいため、地域から緊急情報が出た場合は自己判断で作業を急変させず、普及指導センターやJAの品種別情報を確認する。今季の出穂日、葉色、水管理、収穫日を残すことは、来季の品種構成や作期を見直すための基礎資料にもなる。