最低値一つでは、開花への負荷を読み切れない
農研機構は、キクの高温感受性が暗期開始後から高まり、国内の栽培条件では夜明け前に最大となるという日周変動を報告しています。ただし、これは20℃で栽培し、各時間帯に30℃の高温負荷を与えた実験から導かれた理論です。現場へそのまま温度設定として移すのではなく、実際の温度推移と植物側の感受性の変化を併せて考える必要があります。
まず温度ロガーをキクの生長点に近い高さへ置き、消灯または日没から明期開始までの推移を記録します。日誌には品種、作型、消灯日、冷房と換気の開始・終了時刻、発蕾日、開花日も並べます。「昨夜の最低は何度だったか」だけでなく、「高い温度が暗期のどの時間帯まで続いたか」を確認できる形にすることが要点です。
短時間冷房は、既設ヒートポンプの運転候補として試す
広島県などの研究グループがまとめた栽培指針では、日没後から4時間の冷房をEOD冷房、日の出前4時間の冷房をEON冷房としています。終夜冷房に対する電力使用量は、同指針の試験ではEOD冷房が約40%、EON冷房が約60%少なくなりました。これは特定地点・年次の試験結果であり、自農場の削減率を保証する数字ではありません。
夏秋ギク「岩の白扇」の試験では、最低夜温が25℃を超えた茨城県つくば市で、消灯時期の7月中旬から開花まで自然推移より3℃低くしたEOD冷房と終夜冷房により、発蕾・到花までの日数が短くなりました。一方、最低夜温が23℃程度だった東広島市では、21℃設定の冷房による開花への影響は確認されていません。地域、品種、外気条件が違えば反応も変わるため、温度や時間を一律にコピーせず、普及指導機関や産地の栽培基準を確認したうえで小規模に比較します。
冷房を始める前に、換気と遮光の基本を点検する
農林水産省は施設花きの高温対策として、妻面・側面の開放、作物の光要求性に応じた遮光、細霧冷房・換気装置の適切な利用を挙げています。ヒートポンプを動かす前に、巻き上げ部の詰まり、内張りの開閉、吸排気を妨げる資材がないかを確認します。遮光は強くすればよいわけではなく、品種や生育段階に必要な光を確保しながら温度上昇を抑える位置づけです。
短時間夜間冷房では湿度管理も欠かせません。広島県の指針では、EOD冷房終了後に施設内の相対湿度が100%となった試験例があり、終了後は直ちに内張りを開放するよう注意しています。冷房時刻だけでなく、内張りを開ける時刻と実際の湿度も記録し、自動換気を使う場合はタイマーと開閉動作を事前に確認します。
発蕾日と電力使用量を一緒に評価する
比較する項目は、発蕾日、開花日、花首長、花径などの品質項目と、冷房運転時間、電力使用量、暗期の温湿度です。冷房区と比較区を設けられる場合は、同じ品種・定植日・消灯日の区画でそろえます。条件をそろえられない前年との単純比較では、天候差を冷房効果と取り違えやすいため、外気温の記録も残します。
判断の目的は、終夜冷房を機械的に続けることでも、すべてを4時間運転へ切り替えることでもありません。暗期のどこで高温が続き、どの運転が発蕾・開花と電力使用量にどう結び付いたかを一作ごとに確認することです。その記録が、次作の運転開始条件や品種選択を産地指導者と検討するための根拠になります。