農林水産省は水稲の高温対策として、出穂後の通水管理と収穫前の早期落水防止を挙げている。2026年7月15日付の栃木県塩谷南那須地域の技術情報でも、出穂後は落水時期まで間断かん水を基本とし、高温が予想される場合は夜間かん水で地温を下げるとしている。高温期に重要なのは、水口を一度開けて終わりにすることではなく、登熟中の根を乾燥させないよう次の入水を続けることである。

同じ経営内でも、品種、移植日、直播か移植か、日当たりによって出穂日はそろわない。ほ場一覧に「品種」「実際に確認した出穂日」「現在の水管理」「次回入水予定日」を記入し、出穂日の早い順に並べる。出穂前の予測日は準備に使い、管理期間の起点は実際の穂を見て修正する。地域の栽培指針で落水時期が示されている場合は、その日数を各田の出穂日に足して予定を作る。

間断かんがいは、単に決まった日数で水を出し入れする作業ではない。茨城県は一例として、おおむね2日間湛水、1日間落水としつつ、ほ場条件が異なるため、自然落水後に田面が乾く前、指で触ると湿りを感じる程度で再入水するよう示している。浸透の速い田と水持ちのよい田を同じ間隔で回さず、入水翌日の水深と、次に水口へ来たときの田面の湿りを記録して間隔を調整する。

福岡県の2026年高温対策では、早期水稲は出穂後20日間水を切らさず、登熟期は間断かん水を基本として早期落水を避けるとしている。一方、栃木県の地域情報では落水時期を出穂後30日以降としている。数字だけを全国一律に当てはめず、品種、土質、作期、収穫体系に対応した都道府県や普及指導機関の最新情報を確認することが必要だ。夜間かん水も、地域の技術情報で推奨され、夜間に十分な用水を確保できる場合の選択肢として扱う。

用水量が限られるときは、入水時間を延ばす前に漏水を点検する。福岡県も用水を有効に使うため、ほ場の漏水防止を求めている。畦畔の穴、排水口の閉まり、給水栓の不具合、水尻からの流出を確認し、田面全体へ水が届いたら不要な流出を止める。見回り表には「水口」「水尻」「畦畔」「田面の乾き」の4項目を設け、異常のある田を次の入水前に直す。

入水の優先順位は、出穂・開花期の田、乾きやすい田、前回の入水から時間が空いた田の順に、地域指針と照らして決める。雨の後は予定日だけで入水せず田面を確認し、反対にフェーンや異常高温が予想される場合は、都道府県や土地改良区から出る情報を見て前倒しを検討する。水管理の変更は、下流側の取水や地域の配水計画に影響するため、独断で大量の掛け流しを始めない。

農研機構は、掛け流しかんがいには大きな用水需要が伴い、水利権や施設能力の制約から地区全体では実施できない場合があると指摘している。宮城県亘理・山元地区を対象とした研究事例では、地区全体で掛け流すために必要な水量が水利権水量の約9倍と試算され、節水的な飽水・保水管理へ見直された。これは全国共通の倍率ではないが、個々の田に有効でも地区全体では成立しない管理があることを示す。

共同水路を使う地区では、土地改良区や水利組合に配水日、取水可能時間、夜間通水の可否を確認する。そのうえで、ほ場番号、出穂日、次回入水日、担当者、入水開始時刻、停止確認時刻を1枚にまとめる。重要なのは開始時刻だけでなく停止確認まで担当を決めることだ。週ごとに実際の入水間隔と乾き方を振り返れば、水を必要とする田を優先しながら、開けっぱなしや下流への水不足を減らせる。