農林水産省は水稲の高温対策として、登熟期の稲体の活力低下を防ぐため、出穂後の通水管理と収穫前の早期落水防止を挙げている。一方、埼玉県本庄農林振興センターは、高温少雨で用水が不足する状況では、掛け流しが大量の水を使い、水不足を通じて高温障害を助長するおそれがあるとしている。高温対策は、一枚の田に水を流し続けることではなく、必要な時期に地区内の水田へ水を行き渡らせる視点で組み立てたい。

水管理の期間や方法は、地域の気象、土質、品種、水利条件で異なる。新潟県が2026年7月2日に公表した技術対策資料では、幼穂形成期以降、出穂期25日後まで飽水管理を続け、フェーンや異常高温が予想されるときは事前に湛水するよう示している。これは新潟県の指針であり、全国一律の日数ではない。自地域の普及指導機関やJAの最新情報を確認し、出穂後のどこまで土壌を湿潤に保つかを先に決めておく。

同じ経営内でも、品種、移植日、直播か移植か、圃場条件によって出穂の進み方はそろわない。作業計画には、圃場名、品種、出穂を確認した日、地域指針に基づく水管理の終了予定日を並べる。前年の日付や早い圃場だけを基準に一斉落水すると、出穂の遅い圃場で必要な期間を削る可能性がある。

見回りでは、水口付近だけで判断せず、中央部と水尻側まで確認する。記録項目は「田面水の有無」「溝や足跡に残る水」「水尻側まで水が届いたか」「水口を閉めた時刻」程度に絞ると続けやすい。新潟県の地域資料は、飽水状態を田面や足跡、溝に水がたまっている状態として示している。水深だけを追うのではなく、土壌を強く乾かしていないかを見る材料になる。

限られた用水を生かすには、入水前に畦畔、水口、水尻を一周する。ネズミ穴、畦畔の崩れ、水尻板の隙間があれば先に補修する。埼玉県の技術情報も、漏水防止のため畦畔や水尻を再点検し、圃場全体に水が行き渡ったら速やかに水口を閉めるよう求めている。水がたまりにくい圃場ほど、入水時間を延ばす前に漏水箇所を疑う。

入水時刻も地区の条件に合わせる。同県の情報では、夕方以降の入水は地温を下げる方法として示されている。ただし、夜間の単独見回りや水路への立入りを勧めるものではない。明るい時間に水口と畦畔を点検し、安全に操作できる時間帯と地区の配水時間をすり合わせる。再入水の水深や間隔は、土質と地域指針に従い、田面にひびが進むほどの強い乾燥は避ける。

水口を開けても水量が足りない、末端まで届かない、配水時間が短くなったという変化があれば、個別に掛け流しを始めず、土地改良区、水利組合、JA、普及指導機関へ早めに共有する。農林水産省は、用水供給への影響が見込まれる場合、地域で利水調整を進め、番水や用排水の反復利用などで水を有効活用するよう示している。誰がいつ入水するかを揃えること自体が、高温時の栽培管理になる。

共有時には「圃場名」「出穂確認日」「現在の田面状態」「前回の入水日時」「水尻まで届いたか」を伝える。これなら、出穂期に近い圃場や乾きの早い圃場を地域のルールに沿って整理しやすい。収穫作業を急ぐための早期落水は避け、最終落水日は地域指針、土壌条件、登熟状況、機械作業の可否を合わせて決める。高温年ほど、入水日だけでなく「いつまで湿潤状態を保てたか」を作業記録に残したい。