太陽熱土壌消毒は、透明フィルムなどで土壌表面を覆い、日射で地温を上げる物理的な防除技術です。ただし、必要な温度と継続時間は対象となる病原菌などによって異なります。農研機構の「陽熱プラス」実践マニュアルでも、対象菌によって死滅条件が大きく異なり、処理後に残る場合があるとされています。症状だけで対象を決めず、過去の検査結果や地域で確認されている問題を普及指導機関と整理してから計画します。

被覆前に、温度記録計を置く場所を決めます。圃場の代表地点だけでなく、施設端や日陰になりやすい場所など、地温が上がりにくいと考えられる地点も候補です。測定深さは地域の技術資料に合わせるのが基本ですが、農研機構の実証では深さ5cmと15cmの地温や菌密度が調査されています。浅い位置だけの最高温度を見て、作土全体が処理できたと判断しないことが重要です。

記録表には、被覆開始日時、測定地点、深さ、毎日の最高・最低地温、一定温度以上の積算時間、天候、フィルムの補修履歴を残します。終了基準は一律に決めず、確認対象に関する公的資料や地域の指導値と照合します。該当する死滅条件が分からない場合、地温記録だけで効果を断定せず、翌作の観察や必要な検査につなげます。

被覆前には残渣を片付け、必要な耕起、施肥、畝立てまで終わらせます。農林水産省は、畝立て後に被覆する方法について、処理後に耕起・畝立てする方法よりも、温度が不足しやすい下層土や施設端の土を圃場内へ広げにくい利点を示しています。次作の畝位置まで決めてから処理することで、被覆を外した後の土の移動を減らせます。

土が乾いたままでは熱が伝わりにくいため、被覆直前に十分な水分を確保します。ただし必要量は土性、排水性、処理期間で異なります。「陽熱プラス」マニュアルでは、和歌山県の壌土・埴壌土の事例として、処理中の水分減少などを見込み、かん水直後の体積含水率40%を目安にしています。これは全国共通値ではありません。圃場の土性と排水を確認し、地域資料のかん水量を優先します。

かん水後は速やかに透明フィルムを張り、裾を土などで固定して隙間を減らします。破れや浮きがあれば、その場所だけ加熱条件が変わるため、巡回時に補修日時を記録します。ハウスを閉めて処理する場合は内部が危険な高温になります。温度計の確認は遠隔記録を優先し、入室が必要な作業は涼しい時間帯に複数人で行うなど、熱中症対策を作業計画に組み込みます。

被覆後は、設定した深さごとに地温推移を確認します。農研機構は、現地の地温を実測し、対象病原菌について得られている「温度と積算時間」のデータと照合する考え方を示しています。晴天日の表層最高温度だけでなく、地温が上がりにくい地点・深さで条件を満たしているかを判断材料にします。

曇天や降雨が続いたときは、予定日が来ても機械的に被覆を外しません。一方、特定の温度に達したという理由だけで、すべての土壌病害虫や雑草に効果があったとも判断できません。地温記録は診断結果ではなく、処理条件を再現・改善するための履歴です。対象ごとの根拠がない場合は、地域の病害虫防除所や普及指導機関へ記録を示して判断を仰ぎます。

翌年に同じ圃場で実施するときは、被覆期間だけでなく、開始時の土壌水分、フィルムの状態、曇天日数、地点別の積算時間を前年記録と比較します。これにより、「端部だけ温度が不足した」「深さ15cmの上昇が遅かった」など、次回に直すべき工程を具体化できます。

被覆を外した後に深く耕起すると、十分に加熱されなかった下層や施設端の土を畝へ持ち込む可能性があります。畝立て後に処理した圃場では、畝を崩さず、そのまま播種・定植へつなぐ作業順を基本にします。使用済みフィルムは圃場に放置せず、地域の分別・回収方法に従って処理します。

高温処理は養分動態にも影響します。農研機構の研究では、45℃または60℃で培養した土壌は、高温ほど、また処理期間が長いほど有機態窒素の無機化が進みました。一方、圃場では地温が変動し、土壌による差もあります。処理前に決めた基肥量をそのまま追加せず、地温履歴と土壌分析を確認して、次作の施肥設計を見直します。

太陽熱処理だけですべての問題を解決しようとせず、排水対策、健全苗、輪作、作業機や長靴に付着した土の持込み防止などを組み合わせます。土壌消毒剤などの農薬を併用する場合は、対象作物・対象病害虫、使用量、処理方法、被覆期間、使用時期など、最新の農薬登録内容と製品ラベルを必ず確認してください。