開花始めを、ほ場ごとに記録する
農林水産省の「大豆栽培のポイント」は、大豆が開花期以降に多量の水を必要とし、水分不足によって落花・落莢、不稔莢、子実の肥大不足などが生じ得ると説明している。暦だけで管理を始めるのではなく、まず各ほ場を歩き、最初の花を確認した日を記録する。播種日や品種、播種の遅れが異なれば、隣接するほ場でも水を必要とする時期はそろわない。
今の時期に作る管理表には、ほ場名、開花始め、直近の降雨日と雨量、前回のかん水日を書ける欄を設ける。まだ開花していないほ場と、すでに開花したほ場を分ければ、限られた用水や作業時間をどこへ優先するか整理しやすい。開花前後の中耕・培土は根を傷める可能性があるため、地域の栽培指針で作業期限も確認しておく。
「雨なし1週間」は入口にして、土の中を確かめる
農林水産省の資料では、開花期以降におおむね1週間以上降雨がなく、表土が白く乾燥するような状態を、かん水を検討する目安としている。ただし、農研機構は乾燥ストレスが気象だけでなく土壌や栽培条件にも左右されると説明している。数ミリの雨が降っただけで日数を機械的にゼロへ戻したり、反対に7日たっただけで一斉に給水したりせず、雨量と土の湿りを組み合わせて見る必要がある。
中国四国農政局の南周防地区向け地下かんがい資料では、地域内の判断例として「20mm以上の日雨量がない期間がおよそ7日」と「畝上から約30cmの土に湿り気がないこと」を示している。これは特定地区・設備の目安であり、全国一律の基準ではない。自分のほ場では、給水側・中央・排水側など位置の異なる数か所を同じ時刻に確認し、約30cmの土の湿りと表土の色を記録する。土質、畝高、根域、日射によって乾き方が違うため、地域の普及指導機関や土地改良区の基準がある場合はそちらを優先する。
水が入った時点ではなく、排水できた時点まで見る
畝間かん水が可能な場合、農林水産省は朝夕の涼しい時間帯に短時間で実施し、ほ場全体へ水が行き渡ったら止水して速やかに排水するよう示している。大区画ほ場では、湿害を避けるため一度に多量の水を入れず、複数回に分けることも示されている。作業前に排水口、明渠との接続部、詰まりや崩れを確認し、水を抜ける状態にしてから給水を始める。
給水中は入口だけを見ず、水が中央部や排水側へ到達した時刻も記録する。低い場所に水がたまる、排水側まで届かない、特定の畝だけ急速に流れるといった偏りがあれば、給水時間を延ばす前に流路と排水条件を見直す。地下水位制御設備を使うほ場では、設定水位や止水方法を設備の手順書に従って調整し、降雨予報がある場合の事前排水も含めて管理する。水利権や地域の配水順序も必ず守る。
翌朝の3点確認を、次回のかん水判断につなげる
作業記録は「かん水実施」で終わらせず、開始・終了時刻、水が到達した位置、翌朝の約30cmの湿り、畝間や低部の滞水の有無まで残す。給水側だけ湿って排水側が乾いていれば、次回は区画を分ける判断材料になる。反対に翌朝も水が残る場所があれば、追加のかん水より先に排水経路を確認する。この振り返りを同じ観察地点で続けると、降雨量と乾き方の関係をほ場別に蓄積できる。
農研機構の灌水支援システムは、位置、栽培、土壌、かん水の各情報とメッシュ気象情報から、土壌水分や乾燥ストレスを日単位で推定する仕組みである。利用できる地域や支援体制では、普及指導機関などへ相談する選択肢がある。ただし、推定値だけで給水を決めるのではなく、現地の土の湿り、排水状態、地域の水利条件と突き合わせる。今夏の管理では「開花日」「実測雨量」「土中の湿り」「排水終了」を一枚にそろえることが、乾燥と過湿の両方を避ける基本になる。