農林水産省の技術指針は、大豆では特に開花期以降の干ばつによって落花・落莢が増え、着莢率の低下、不稔莢の増加、着粒重の減少などを招くため、状況に応じたかん水が必要だとしています。品種、播種日、地域によって開花時期は異なるため、「8月になったら」ではなく、各ほ場で最初の花を確認した日を記録し、その日から降雨と土壌水分を追うのが実務的です。

まずほ場台帳に「初開花日」「最後にまとまった雨が降った日」「かん水可能な水源」「排水口の状態」の4項目を加えます。複数ほ場がある場合は、開花したほ場、砂質で乾きやすいほ場、生育量が大きいほ場を先に巡回します。開花前のほ場と開花後のほ場を同じ順番で扱わないことが、限られた水と作業時間を重要な時期へ振り向ける第一歩です。

地域資料には、判断の参考となる異なる目安が示されています。滋賀県の栽培指針では、開花期から子実肥大期に10日以上降雨がない場合や、日中に葉の反転が50%以上見られる場合をかん水の目安としています。一方、中国四国農政局の地下かんがい資料では、晴天が約7日続くことを目安とし、畝上から約30センチの深さの土に湿り気がないかを確認する方法を示しています。これらは土壌、給水方式、地域条件が異なるため、全国共通の固定値として使うのではなく、地元の栽培指針や普及指導機関の基準を優先してください。

巡回地点は、ほ場入口だけでなく中央部を含む2、3か所に固定します。手や移植ごてで作土の下まで確認し、湿りが残っているか、畝間に亀裂が生じていないか、日中に葉が内側へ巻いてほ場が白っぽく見えていないかを同じ時刻帯に記録します。葉の巻きや反転が目立つ状態は、乾燥が進んでいることを示すため、それだけを待って判断するのではなく、無降雨日数と土の状態から一段早く準備を始めます。

降雨量は感覚だけで数えず、ほ場の簡易雨量計や近隣の気象庁アメダスを使って日別に残します。近くの観測所とほ場では夕立の有無が違うことがあるため、アメダスの値は現地の土の確認と組み合わせます。少量の雨があった日も記録し、「雨が降ったから日数をゼロに戻す」と機械的に扱わないようにします。

水田転換畑の大豆では、乾燥対策と湿害回避を同時に考える必要があります。畝間かん水や明きょへの通水を行う前に、排水口、明きょ、畝間の詰まりを確認し、給水を止めた後に水が速やかに抜ける経路を確保します。農林水産省の地域指針も、長時間の停滞は湿害につながるため、短時間で通水するよう注意を促しています。排水できないほ場へ先に水を入れないことが重要です。

当日は「給水開始時刻」「水が畝間末端へ届いた時刻」「給水停止時刻」「排水完了の確認」を記録します。畝間全体を長時間湛水させることを目的にせず、土へ水分を補給した後は停滞水を残さない運用にします。必要量や通水時間は土質、畝の長さ、傾斜、暗きょの有無で変わるため、地域の指針と過去の記録を基準に一筆ずつ調整してください。用水の利用時間や水利上の取り扱いも事前に土地改良区などへ確認します。

開花後は、ほ場ごとに「無降雨日数」「深さを決めた土の湿り」「葉の巻き・反転」「次の降雨見込み」「排水可否」を一覧にし、巡回のたびに更新します。給水後も翌日に土の湿りと滞水の有無を確認し、作業時間と水の到達状況を残します。この記録があれば、次の乾燥時に、どのほ場が早く乾き、どの畝間へ水が届きにくかったかを具体的に判断できます。

農研機構は、気象、土壌、栽培情報から大豆ほ場の土壌水分と乾燥ストレスを日単位で推定し、10日先まで予測する灌水支援技術を開発しています。ただし、推定値だけで給水を決定するものではありません。利用できる地域やサービスを確認したうえで、現地の土壌状態、排水能力、水利条件と組み合わせる判断材料として使います。システムを使わない場合も、開花日と降雨、土の状態を同じ形式で記録すれば、乾燥が深刻になってから慌てて水を手配する状況を減らせます。