茨城県農業総合センター病害虫防除部は、イチゴ炭疽病菌の生育適温を28℃前後とし、7~9月の高温期に発生が多いと説明している。潜在感染した親株や被害残渣が伝染源となり、降雨や頭上かん水による水滴の跳ね上がりで二次伝染するため、葉の症状だけを探すより、まず水滴が苗から苗へ移る経路を減らすことが重要になる。

福岡県南筑後普及指導センターが2026年7月6日に公表した現地情報では、雨よけ育苗の研修を行い、同年度に新たに8人が導入したとしている。一方、雨よけは屋根を張れば完了ではない。吹き込みや頭上かん水がなくても、強い水圧で株元の水が跳ねる、床面に落ちた水滴が苗へ戻る、といった経路が残る。雨よけ、株元給水、床からの跳ね上がり防止を一組の対策として点検する。

点検は、かん水を始める前、運転中、停止直後の3回に分けると見落としを減らせる。開始前に葉が乾いている状態を確認し、運転中は列の始端・中央・末端で株元への流入を見る。停止直後には、葉や葉柄への飛沫、ポット外へのあふれ、通路の水たまりを確認する。葉が濡れた区画や跳ねが生じた場所は、その場で分かるよう印を付け、水圧、ノズルや給水口の位置、床面の状態を順に見直す。

農研機構が紹介する流水育苗ポット台の成果でも、各ポットの株元へ給水し、水滴の飛散を避ける構造が採られている。留意点として、水質によるチューブの目詰まり、チューブ表面の汚れ、ポットと給水口の位置ずれを確認する必要が示されている。設備を導入している場合も、運転時間だけで給水完了とせず、末端を含む数か所で実際の流入を確かめる。

茨城県は、育苗床や通路を透水性のあるシートで覆うこと、地面から離したベンチを使うこと、株元へ低い水圧でかん水することを跳ね上がり対策として挙げている。また、苗間隔を広くして通風を確保し、多湿を避けるよう示している。通路に水が残る場合は、排水先の詰まりや床面のくぼみも確認し、苗の直下だけでなく人が歩く場所まで水滴の発生源として見る。

宮城県病害虫防除所の発生予察資料は、可能な限り頭上かん水を避け、かん水チューブや底面給水を用いることに加え、遅い時間のかん水を避け、日没までに水滴が乾くよう管理することを挙げている。現場では、かん水開始・終了時刻、葉濡れの有無、給水ムラがあった列、通路の滞水を同じ様式で毎日記録すると、設備の異常や管理変更後の差を追いやすい。

ランナーや葉柄の変色、しおれなどを見つけても、外観だけで炭疽病と断定しない。該当苗を識別し、接触や水滴による広がりを避けながら、周辺苗の葉や葉柄も確認する。対応や処分の範囲に迷う場合は、地域の病害虫防除所、普及指導センター、JAなどへ相談し、地域の発生予察情報と合わせて判断する。

農林水産省は、発生しにくい環境づくり、発生予察、生物的・物理的手段などを組み合わせ、化学農薬への依存を抑える総合防除を推進している。薬剤防除を行う場合は、地域の指導情報を確認したうえで、使用時点の登録ラベルに記載された作物、適用病害虫、希釈倍数・使用量、使用時期、使用回数、使用方法などを必ず守る。雨よけや株元給水は薬剤の代替と決めつけず、日々の水滴管理を総合防除の土台として続けたい。