「3日冷蔵」は品種と地域を限定して検討する
農研機構が2024年に公表した技術は、トレイ苗を果実予冷庫に入れ、13~15℃の暗黒条件で3日間処理するものだ。香川県善通寺市で6月下旬に採苗し、24穴トレイ、1穴当たり培地容量175mLで育苗した「さぬき姫」「ゆめのか」「さちのか」を対象とした試験では、無処理より頂花房の出蕾時期が早まった。従来の間欠冷蔵処理を終えた後に空いた予冷庫を使える点も、この技術の特徴である。
一方、この温度と日数を、異なる品種、ポット容量、採苗時期、地域へそのまま当てはめられるとは限らない。まず自園の苗が試験条件にどこまで近いかを確認し、異なる場合は地域の普及指導機関や品種の栽培指針に相談する。全苗を一度に処理せず、無処理の比較区を残した小さなロットから始めれば、出蕾日や苗質の違いを翌年の判断材料にできる。
処理日は「自然分化期の約1週間前」から逆算する
研究では、効果が最も得られる冷蔵開始時期は、各品種をその地域で自然条件に置いたときの花芽分化期のおよそ1週間前だった。供試した3品種の自然分化は「さぬき姫」「ゆめのか」「さちのか」の順に早く、同じ日に一斉入庫する根拠はない。7月中に品種別の台帳を作り、過去の花芽検鏡日、定植日、出蕾日、育苗場所の日平均気温を並べ、予定する自然分化期から7日程度戻した日を仮の入庫候補日にする。
仮の日付は固定しない。農研機構は、8月下旬~9月下旬が例年より高温の年には自然分化期が遅れ、適切な冷蔵開始時期も遅れる可能性があるとしている。平年の暦だけで決めず、直前まで育苗場所の気温推移と地域の花芽分化情報を確認する。品種ごとに候補日を更新し、最終判断を誰がいつ行うかまで作業表に書いておく。
予冷庫の容量からロット表を先に作る
入庫直前になって苗数を数えると、収容できないトレイが出たり、分化時期の異なる品種を同じ便に入れたりしやすい。棚ごとの収容可能枚数を実測し、品種、採苗日、トレイ番号、入庫予定日時、出庫予定日時を記したロット表を作る。研究条件では入出庫を正午ごろに行っているため、3日後の出庫作業まで人員と育苗場所を確保する。庫内温度は苗の近くで連続記録し、設定値だけでなく実測値を保存したい。
果実予冷庫を共用する場合は、苗の持込みが施設の衛生管理や出荷物の保管に支障を生じないか、管理者と事前に確認する。トレイには耐水性の識別札を付け、処理済みと未処理を置き場で分ける。庫内の空気の流れを妨げる詰め方を避け、実際の温度が13~15℃の範囲で推移したかを出庫時に確認する。温度を維持できなかったロットは同じ処理済み群として扱わず、記録上で区別する。
出庫後は一律定植せず、花芽と出蕾日を確かめる
出庫後は、間欠冷蔵処理を行う場合と同様に通常の肥培管理へ戻す。冷蔵処理を定植許可の代わりにはせず、地域で採用されている方法に従って花芽分化を確認する。確認用の苗をロットごとに確保し、処理日、検鏡結果、定植日、出蕾日、開花日をつなげて記録する。無処理区と比べることで、自園の品種と作型で翌年も採用する価値があるかを判断しやすくなる。
高温対策は冷蔵処理だけで完結しない。農林水産省のイチゴ向け資料では、育苗期の昇温抑制や肥料調整、短日夜冷・低温暗黒・間欠冷蔵などを条件に応じて組み合わせる考え方が示されている。苗の異常を処理だけの影響と決めつけず、根域の過湿、培地温、肥培管理、病害虫の有無を分けて確認し、判断に迷う場合は普及指導機関へ相談する。農薬を使用する場合は、対象作物・病害虫、使用時期、希釈倍率、使用回数など最新の登録ラベルを必ず確認する。