栃木県が2026年7月15日に公表した塩谷南那須地域の情報では、コシヒカリの出穂期は前年より早まる予測です。一方、千葉県の7月24日発行情報では、4月20日植えの出穂期はおおむね平年並みとされています。この違いは、県の情報が食い違っているのではなく、地域、品種、移植日、ほ場条件によって生育が異なることを示しています。前年の日付をそのまま作業暦へ写すと、出穂前後の水需要が大きい時期や、その後の管理期間を外す恐れがあります。

まず、ほ場名、品種、移植日とともに、実際に出穂が進んだ日を記録します。出穂日の見込みは県や普及指導機関の生育情報で早めに把握し、最終的には自分のほ場を見て補正します。管理表には「出穂日」「出穂後20日」「出穂後30日」「予定する最終入水日」を並べておくと、複数品種や作期の異なるほ場でも混同しにくくなります。地域の生育情報は一律の作業日を決めるものではなく、見回りを前倒しする合図として使うのが実務的です。

栃木県の2026年の技術情報は、出穂後に高温が予想される場合、夜間かん水で地温を下げることを示しています。日中に温まった用水を浅く残すだけでは、期待した冷却にならない場合があります。夕方の入水前と翌朝に、水口、ほ場中央、水尻の水温や水の残り方を同じ場所で確認すると、用水がほ場全体へ届いたかを比較できます。高価な設備がなくても、測定時刻と位置を固定して記録することが重要です。

夜間かん水は、暗い時間にほ場内へ入る作業を増やすという意味ではありません。明るいうちに水口、水尻、畦畔の異常や排水先を確認し、可能なら夕方に入水、翌朝に状態を確認する手順を決めます。漏水が多いほ場、排水しにくいほ場、冷たい用水が届きにくい末端ほ場では同じ運転時間でも結果が異なるため、「何時間入れたか」だけでなく、水がどこまで届き、朝にどの程度残ったかを記録します。

農研機構が掲載する愛知県農業総合試験場の成果では、コシヒカリの出穂期以降20~30日間、日平均気温より3℃以上低い用水を連続通水した試験で、ほ場平均の水面水温が対照ほ場より1.4~2.3℃低下し、基部未熟粒が減少しました。ただし、試験の通水量は1日当たり水深換算133~683ミリと大きく、冷たい用水を十分確保できる条件での結果です。「掛け流せば必ず冷える」と一般化できるものではありません。

用水量に制約がある地域で各戸が連続通水を始めると、下流や末端へ水が届かなくなる可能性があります。土地改良区や水利組合の番水、取水時間、排水条件を確認し、地域の指導に沿って間断かん水や夜間かん水を組み立てます。実施後は水口だけで判断せず、中央と水尻まで確認します。用水温が高い、ほ場内で水が滞留する、排水できないといった場合は、連続時間を延ばす前に普及指導機関や土地改良区へ相談するのが安全です。

栃木県の2026年情報は、落水時期を出穂後30日以降とし、それまで間断かん水を基本としています。農林水産省も、高温時の管理として出穂後の通水と収穫前の早期落水防止を挙げています。早く収穫準備へ入りたいからと水を切るのではなく、まず各ほ場の出穂後日数を確認し、土質、機械作業性、地域の栽培基準、今後の用水供給日を合わせて落水日を決めます。

管理表には、実際の入水日と落水状態も追記します。予定日に水が来なかったほ場や、自然減水が速かったほ場を分けておけば、次の番水でどこを優先するか判断しやすくなります。最終的な水管理は地域、品種、土壌、作期で異なるため、出穂後30日という数字だけを機械的に当てはめず、都道府県や普及指導機関の最新情報を確認してください。今季の記録は、来年の水口調整や作期分散を考える基礎資料にもなります。