高温対策の単位を「育苗施設」から「トレイ」に変える
農林水産省によると、2025年夏の日本の平均気温は1898年の統計開始以降で最も高くなりました。同省が都道府県から集めた事例では、秋冬作キャベツの育苗期に、高温による生育停滞、徒長、根鉢形成不足などが報告されています。施設全体の気温だけでなく、トレイごとの乾き方や苗姿を管理しなければ、定植時のばらつきとして残る問題です。
まず育苗床を、出入口側、中央、風下側、外周など乾き方が異なる区画に分け、各区画から基準トレイを決めます。朝のかん水時刻、午後の補足かん水の有無、夕方の培土表面、苗の傾きや葉色、根鉢のまとまりを同じ様式で記録してください。全面を一律に扱わず、乾きの速い場所と水が残る場所を把握することが、設備を増やす前にできる対策です。
かん水は朝を基準に、夕方の状態から翌日を修正する
秋田県の栽培技術指針では、秋冬どりキャベツのセル成型苗について朝のかん水を基本とし、生育後半は必要に応じて午後にも行う一方、曇雨天時の不要な午後かん水を控えるよう示しています。また、夜間に水分が多い状態は軟弱徒長や根鉢形成不良につながるため、夕方には培土表面が乾き気味になる管理を掲げています。これは全国共通の固定回数ではなく、地域、トレイ規格、培土、苗齢に合わせて調整するための考え方として利用します。
実務では、朝に十分かん水した後、午後は基準トレイを持った重さ、培土表面、セル底からの水分、苗のしおれ方で確認します。表面が乾いたという一点だけで全トレイへ追加せず、区画ごとに判断します。夕方にも水が残り続ける場所は翌日の量や散水むらを見直し、早く乾き過ぎる場所はノズル、風当たり、トレイ配置を確認します。極端な水切りや一律の回数削減ではなく、朝から夕方までの変化をそろえる管理です。
遮光は掛けっぱなしにせず、発芽後と強日射時を分ける
同指針は、播種後の乾燥防止に用いた被覆は発芽が始まったら速やかに外し、徒長を防ぐよう示しています。セル成型苗では通風と気温上昇の抑制を図りつつ、遮光は必要な強日射の時間帯に限るという考え方です。農林水産省がまとめた産地事例にも、遮光・遮熱資材、循環扇、防虫ネットの目合いの見直しなどが挙げられていますが、遮光率や運転時間は施設条件によって変わります。
毎日、遮光の開始・終了時刻と、外周・中央の苗姿を記録します。葉が細く伸びる、株同士が重なる、根鉢がまとまらないといった変化を見つけた場合も、それだけで原因を断定せず、かん水、日射、通風、苗齢を併せて振り返ります。害虫や病気が疑われる異常は自己判断で決めつけず、地域の普及指導機関や病害虫防除所へ相談してください。農薬を使用する場合は、対象作物・対象病害虫、使用時期、希釈倍数、使用回数など最新の登録内容と製品ラベルを必ず確認します。
定植日は暦だけでなく、苗・ほ場・水の三条件で決める
定植前には、根鉢が崩れず引き抜けるか、苗姿が地域の定植基準に達したか、ほ場の土壌水分と定植後の水源を確保できるかを確認します。一つでも不足する場合に備え、播種を複数回に分ける、定植区画の順番を決める、かん水可能面積から一日の定植量を逆算するなど、作業計画に逃げ幅を持たせます。定植予定日だけを優先して根鉢形成不足の苗を植えると、その後の高温・少雨に対する余裕が小さくなります。
宮城県農業・園芸総合研究所の成果では、特定品種と長期無追肥育苗を組み合わせ、同県の慣行より遅い9月上旬定植でも年内収穫が可能となった事例が示されています。ただし、これは品種、地域、栽培条件を限定した試験結果であり、そのまま他地域へ移せる日付ではありません。自分の産地では、過去の播種日、定植時の葉数と根鉢、定植後の欠株、収穫開始日を作型ごとに残し、翌年の播種分散や品種構成を普及指導員、JA、種苗会社と検討する材料にします。