夕方の涼しさを、果実の冷え込みと同じにしない
農林水産省が2026年7月に公開した野菜の高温対策資料では、施設キュウリの収穫時対策として、涼しい時間帯の収穫と、箱詰め後の予冷が挙げられています。岩手県農業研究センターのマニュアルも、収穫時の気温が高いほどフケ果が発生しやすいこと、収穫直後には異常が見えない果実でも時間の経過とともに症状が現れる場合があることを示しています。収穫時の外観だけで、その後の品質を判断し切ることはできません。
夕方に気温が低下しても、水分の多いキュウリの果実温度はすぐには下がりません。「日中より涼しくなったから大丈夫」と考えて夕方収穫へ一律に寄せるのではなく、可能な圃場は気温が上がる前の早朝に収穫します。夕方に収穫する場合も、自然に冷えるのを待たず、箱詰めと入庫を早める前提で作業を組みます。
まず一週間、圃場ごとに収穫開始時刻、収穫終了時刻、箱詰め終了時刻、予冷庫または集荷場への搬入時刻を記録します。品質問題が生じたロットを後から確認できるよう、収穫日だけでなく時間帯も残すことが、工程改善の出発点になります。
圃場では「満車になるまで待つ」をやめる
収穫した果実は直射日光に当てず、できるだけ早く作業小屋などへ運びます。岩手県のマニュアルでは、やむを得ず圃場に仮置きする場合も、アーチ内や簡易遮光施設などの日陰を利用するよう示しています。コンテナに日よけを掛けても、熱い地面や荷台に長時間置けば品温を下げる工程にはなりません。
運搬は「軽トラックが満車になったら」ではなく、収穫開始から作業場へ戻すまでの上限時間を農場内で決めます。収穫人数が多い日は回収担当を置く、小区画ごとに搬出する、日陰の中継場所を定めるなど、少量でも先に動かせる流れを作ります。日陰は予冷の代わりではなく、入庫までの加熱を抑える待避場所と位置付けます。
圃場別の収穫量が多く、早朝だけでは終わらない場合は、収穫順を毎日固定しないことも重要です。前日に入庫が遅れた圃場や、日当たりが早い圃場を先に回すなど、時刻記録を翌日の順番へ反映させます。作業者の暑熱対策も優先し、無理に早朝の短時間へ全量を詰め込まず、回収便や選果担当の配置で高品温の滞留を減らします。
冷庫の設定温度より「何時に入り、どこまで冷えたか」を見る
予冷庫があっても、箱詰めが終日滞れば効果を十分に生かせません。箱詰め後は可能な限り早く入庫し、冷気の通り道を塞がない積み方にします。入庫順、箱数、入庫時刻を記録し、冷庫の能力を超える日には集荷場と搬入時間を調整します。
岩手県のマニュアルでは、予冷庫を7℃に設定した事例でも、一晩でフィルム内温度が設定温度まで下がらなかったと報告されています。したがって、操作盤の表示だけで冷却完了と判断せず、代表箱のフィルム内温度など、出荷形態に合った測定点を決めて推移を記録します。温度計の設置方法や衛生管理は、選果場・出荷組織の手順に合わせます。
一方で、設定温度をむやみに下げればよいわけではありません。キュウリは低温条件や貯蔵期間によって低温障害を生じる可能性があります。予冷温度、時間、包装資材は、品種、輸送時間、出荷先の基準、施設の運用に合わせ、JAや普及指導機関と確認します。新しい鮮度保持フィルムを使う場合も、既存の包装・出荷基準と適合するかを先に確かめます。
収穫から市場まで、切れ目を一枚の表にする
フケ果対策は生産者の予冷だけでは完結しません。岩手県の資料は、生産側では収穫後速やかに集荷場へ運び、流通側では棚置きを避けて低温庫へ入れ、輸送を含む低温管理を途切れさせない必要があるとしています。農場で冷やしても、集荷待ちや積み替え時に長時間高温へ戻れば、工程全体の弱点になります。
出荷組織と、最終集荷時刻、予冷開始時刻、冷蔵車への積載時刻、休日や多量出荷日の扱いを一枚の工程表にします。農場側では「収穫終了から入庫まで」、集荷場側では「荷受けから予冷開始まで」を記録し、遅れが繰り返される時間帯を探します。品質上の申し出があった場合は、圃場や担当者を責める材料ではなく、どの区間で高温滞留が生じたかを確認する記録として使います。
今週から始めるなら、①早朝収穫を優先する圃場を決める、②日陰の仮置き場所と回収担当を決める、③箱詰め終了・入庫時刻をロットごとに残す、④代表箱の温度を確認する、⑤集荷場と締切時刻を再確認する、の五点で十分です。資材を増やす前に、キュウリが高い品温で止まっている時間を見つけて短くすることが、盛夏の実行しやすい改善になります。