曲がり果だけで原因を決めず、三つの記録を並べる
曲がり果、芯焼け、葉焼け、日中の萎れは、高温期に草勢が落ちていることを知る手掛かりになります。ただし、一つの症状だけで水不足や病害と断定することはできません。毎日同じ時刻に「かん水時間または使用水量」「出荷対象外として摘果した本数」「正午前後の萎れの有無」を畝ごとに記録し、前日や隣の畝との差を見ます。収穫本数と降雨量も併記すると、着果負担や天候との関係を振り返りやすくなります。
農林水産省がまとめた福島県の露地・施設キュウリの事例では、梅雨明け以降の高温・乾燥時に少量多回数のかん水を徹底し、草勢維持のため不整形果を早めに摘果しています。ここでいう早期摘果は、形を見ただけで一律に落とすことではありません。地域や出荷先の規格に照らして明らかに販売対象外となる果実を残さず、株の負担を軽くする作業として位置付けます。
一度の長時間かん水より、まず水の届き方をそろえる
かん水量を増やす前に、フィルター、圧力、チューブの折れ、末端部の吐出、目詰まりを確認します。同じ時間だけ運転しても、配管の始点と末端、畝の高低差によって到達量が異なることがあります。代表する数地点で一定時間の吐出量を容器に受けて比較し、極端に少ない場所を補修してから運転時間を調整します。土壌水分計を使う場合も、数値だけでなくセンサーの深さと設置場所を固定することが大切です。
高温期は、一回の長時間運転に頼らず、地域の栽培指針、土質、根の張り、かん水設備の能力に合わせて回数を分けます。朝の開始前、需要が高まる時間帯、夕方の根域状態を同じ場所で確かめ、翌日の設定に反映します。全国共通の分数や水量はありません。前日の設定から小さく変更し、変更時刻と量を残すことで、過湿と乾燥を往復する管理を避けやすくなります。
根域を守ってから、遮光やミストを追加する
露地や雨よけ栽培では、敷きわらなどで土壌表面を覆うことが水分保持の選択肢になります。遮光資材は葉焼け対策になりますが、資材の遮光率、展張時間、地域の日射条件によって生育への影響が変わるため、産地の指導資料に沿って選びます。まず一部の畝で試し、葉色、節間、収穫量の変化を無処理区と比べてから面積を広げると判断しやすくなります。
福島県の簡易ミスト実証では、晴天時の日中平均気温が2.0~3.0℃低下し、葉焼け・芯焼けの抑制が確認された一方、収量差は確認されませんでした。また、葉濡れによって病害が拡大する可能性や、軒高の低い施設ではノズルと作物の距離を確保しにくいという課題も示されています。ミストは根域へのかん水を置き換えるものではなく、水源と自動かん水が確保できた施設で検討する追加策です。
朝の10分点検を固定し、異常は地域の指導機関へつなぐ
毎朝、①フィルターと圧力、②始点・中央・末端の吐出、③根域の水分、④新葉と生長点、⑤残した果実数、⑥前日の摘果数と収穫数を順番に確認します。急に萎れた株や欠株がまとまって現れた場合は、水量だけを増やして済ませず、配管不良、根域の過湿、茎葉や根の異常を分けて記録し、写真と発生位置を添えて普及指導センターやJAへ相談してください。この記事の観察項目は診断基準ではありません。
病害虫が疑われても、症状だけで薬剤を選ばないことが重要です。農薬を使用する場合は、使用時点の登録ラベルで、適用作物、対象病害虫、希釈倍率または使用量、使用方法、収穫前日数、使用回数、成分ごとの総使用回数を必ず確認します。高温時の散布は作業者の熱中症リスクも伴うため、地域の指導機関と相談し、安全な作業時間と人員配置を含めて判断します。