果実だけでなく、根域と花を同時に見る
農林水産省のナス向け資料は、高温・乾燥時の着果不良や肥大遅延について、花芽形成の不良や花粉の稔性低下を要因として挙げ、予防策に十分なかん水を示しています。また、強日射によって蒸散が増え、草勢が低下すると、つやなし果や日焼け果が懸念されるとしています。したがって、果実のつやだけを見て原因を決めたり、直ちにかん水量を大きく変えたりするのは避けます。
朝の巡回では、畝の表面だけでなく、点滴口の近くと点滴間、畝の中央と端など複数地点で土の湿り方を比較します。併せて、先端葉の大きさと向き、開花数、落花、幼果の残り方、収穫果の肥大と外観を記録します。症状から病害、生理障害、害虫被害を断定せず、圃場内で偏りがあるか、数日続いているかを確認して、普及指導機関やJAへ相談できる材料を残します。
かん水は総量だけでなく、届き方を点検する
「十分なかん水」は、一度に多量の水を入れることと同義ではありません。まず、フィルターや配管の詰まり、末端の吐出、点滴口ごとのばらつき、マルチ下の湿り方を確認します。入口側だけが湿り、末端や点滴間が乾いていれば、設定時間を延ばす前に設備側の偏りを直す必要があります。露地では、敷きわらなどが土壌の乾燥と地温上昇の予防策として公式資料に示されています。
かん水の時刻、運転時間、使用量を記録できる場合は使用量、確認地点の湿り方を一組で残します。降雨後も雨量だけで済ませず、マルチ下や根域まで水が届いたかを確かめます。必要量は土質、畝、栽植密度、設備、生育段階で変わるため、全国一律の量へ合わせず、地域の栽培指針と実際の根域水分を基準に調整してください。急な増減を行うときは、まず一部区画で水の広がりを確認します。
遮光は掛けた事実ではなく、光と生育の両方で判断する
施設ナスでは、農林水産省資料が遮光カーテンなどによる保護を高温時の対策に挙げています。産地事例にも、高温期の遮光・遮熱資材によって着色不良やつやなし果への対応を進めた例があります。ただし、資材の種類、遮光率、展張時間が異なれば、施設内の光環境や温度への影響も異なります。終日固定する前に、換気口を妨げていないか、曇天日にも閉じたままになっていないかを確認します。
巡回表には、遮光の開始・終了時刻、天候、施設内の最高温度、花や幼果の変化を記入します。温度計は直射日光や高温になる構造材の近くを避け、実際に作物がある高さで測定します。遮光後も温度が下がらない場合は、換気経路、被覆の状態、かん水の届き方を切り分けます。遮光だけで全ての変化を説明せず、数日分の温度と生育記録を地域の指導担当者と共有してください。
3日単位の記録で、翌週の作業を決める
毎朝、①根域の湿りの偏り、②配管末端の吐出、③遮光の開閉時刻、④開花・落花・幼果、⑤収穫果の肥大と外観を同じ順序で確認します。まず3日間並べると、単日の天候による変化と、同じ位置で続く偏りを分けやすくなります。気象庁の週間予報、2週間気温予報、早期天候情報も確認し、高温が続く見込みなら、かん水設備の点検、敷きわらの補修、遮光の運用確認を前倒しします。
害虫や病害が疑われても、外観だけで決めつけず、都道府県の病害虫発生予察情報と地域の指導機関を確認してください。農薬を使用する場合は、作物名、対象病害虫、使用時期、希釈倍数・使用量、使用回数、収穫前日数など、使用時点の登録内容と製品ラベルを必ず確認します。高温時の散布は作業者の安全にも関わるため、気象条件と地域の安全指導を踏まえて作業計画を立てます。