暑さ指数(WBGT)は、気温だけでなく湿度や日射などを基にした熱中症予防の指標です。熱中症警戒アラートは、府県予報区内の算出地点のいずれかで日最高WBGTが33以上と予測された場合に発表されます。ただし、気象庁は、アラートが発表されていなくても周辺環境、行動、体調によって熱中症が起こり得ると説明しています。アラートの有無を、そのまま個々の畑やハウスの安全判定に置き換えないことが重要です。

厚生労働省の令和8年版ガイドラインは、JIS Z 8504またはJIS B 7922に適合したWBGT指数計を準備・点検し、時刻や場所による変化を考慮して随時把握することを基本としています。地域の公表値は参考になりますが、直射日光下、熱源の近く、冷房がなく風通しの悪い屋内では、参考値が現場の実測値より低くなる場合があります。朝の作業表には気温だけでなく、測定する場所と時刻、測定結果を受けて短縮・変更・中止を判断する担当者を記入します。指数計は休憩所ではなく、実際に人が作業する環境で確認します。

ひとり作業を避けられない小規模経営でも、所在が分からない状態は減らせます。出発前に、作業者名、ほ場・施設名、作業内容、開始時刻、終了予定時刻、次の連絡時刻を家族や事務所と共有します。連絡方法は電話、無線、メッセージなど現場で確実に使えるものを選び、着信に気づきにくい機械作業では休憩時刻と連絡時刻を合わせます。連絡がない場合に「誰が電話し、応答がなければ誰が現場へ向かうか」まで決めて初めて見守りになります。

農林水産省はできるだけ単独作業を避けるよう呼びかけ、厚生労働省のガイドラインも巡視、2人1組のバディ制、双方向の定期連絡などを早期発見の方法に挙げています。ウェアラブル機器は補助になりますが、機器だけでは状態を正確に把握できない場合があるため、声かけや巡視と組み合わせます。複数人の現場では、互いに名前を呼んで返答、歩き方、会話の様子を確かめ、「本人が大丈夫と言った」だけで確認を終えない運用にします。

暑さに慣れていない人には、普段と同じ作業時間を一律に当てはめません。厚生労働省のガイドラインは、暑熱順化の方法として、7日以上かけて暑い環境での身体負荷と作業時間を徐々に増やすことを示しています。また、暑さへのばく露が中断すると4日後には順化の顕著な喪失が始まるとしています。新しく入った人、短期就労者、連休・療養明けの人は朝礼で把握し、短い作業区切り、負荷の軽い作業、巡視頻度の増加を組み合わせます。

同じWBGTでも、作業強度や服装で負担は変わります。雨具、防護服、通気性の低い衣服を着る作業を、通常の作業着と同じ条件で扱わないことが大切です。暑熱順化の状況、服装、連続作業時間をWBGTと一緒に記録し、草刈り、収穫物の運搬、ハウス内作業など負荷の異なる仕事を並べ替えます。睡眠不足、朝食を取っていない、下痢、発熱など普段と違う体調がある場合も、本人任せにせず、作業変更や中止を相談できる雰囲気を作ります。

ふらつき、めまい、頭痛、けいれん、普段と異なる大量の発汗など、熱中症を疑わせる変化が見られたら、診断しようとせず、まず作業から離して涼しい場所へ移し、衣服を緩めて身体を冷やします。状態に応じて救急隊を要請するか、医療機関へ連絡します。本人に自覚がない、または「大丈夫」と話していても、あらかじめ決めた担当者へ連絡し、手順に沿って対応します。容態が変わる可能性があるため、搬送や救急隊の到着まで一人にしません。

現場ごとの手順書には、報告先、農場の住所と進入経路、救急車を誘導する場所、近隣の医療機関、冷却場所、冷却用品の保管場所を記します。携帯電話が通じにくいほ場では、連絡可能地点と代替手段も確認します。雇用する労働者がいる経営体では、WBGT28以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超えることが見込まれる作業について、報告体制、重篤化を防ぐ手順、関係作業者への周知が労働安全衛生規則で事業者に義務付けられています。家族経営でも、同じ仕組みを作業前の短い打ち合わせに取り入れることで、「誰にも気づかれない時間」を短くできます。