農林水産省が2026年7月に公表したピーマンの高温対策資料は、7~9月頃に日焼け果、赤果、受精不良による奇形果や石果、尻腐果が問題になり得ると整理している。日焼け果については、果肉内温度が50℃以上の状態で20~30分続くと発生するとされ、露地では整枝、施設では遮熱・遮光、両者に共通する対策として天候や指標に基づくかん水・施肥管理が挙げられている。

ただし、果実の外観だけで原因を決めつけることはできない。傷んだ果実を見てから一度に水を増やすのではなく、晴天が続く前から根域の水分が一日の途中で切れていないかを確認する。朝の巡回では、前日の天気、かん水の総運転時間、土の水分、しおれや果実への直射の有無を一組で記録すると、変更の根拠を残しやすい。

岩手県農業研究センターは、雨よけ夏秋ピーマンについて、葉面積指数と日射量を基にしたかん水指標を示している。日射比例式を使えない場合の参考値は、7月が晴れ4.1、曇り2.6、雨0.6リットル、8月が晴れ4.8、曇り3.6、雨1.2リットルで、いずれも1株1日当たりである。試験では必要量を可能な範囲で少量多頻度に分けることが望ましいとされた。

この数字は全国一律の処方ではない。研究資料は、塩類集積がなく排水が良好な岩手県内のほ場を対象とし、土性や生育状況によって過不足が生じるため、ほ場観察やpFメーターなどで調整するよう明記している。品種、栽植密度、株の大きさ、土質、水源、地域の日射が違えば必要量も変わる。まず地域の普及指導機関やJAの基準を優先し、岩手県の値は水量を考える際の比較材料として扱う。

最初に、点滴チューブの始点・中央・末端で、同じ時間に出る水量を実測する。目標とする1株当たり水量を、1株に供給される1時間当たりの実吐出量で割れば、その日に必要な総運転時間の目安を出せる。圧力差や目詰まりで吐出がそろわなければ、設定時間だけを延ばしても株ごとの水分差は残るため、フィルター、圧力、チューブ末端までの通水を先に確かめる。

次に、総運転時間を複数回へ分け、各回の前後で同じ場所を観察する。岩手県の試験では畝中央の深さ20cmにpFメーターを設置しているため、センサーを使う場合は設置位置と深さを固定する。センサーがない場合も、株元表面だけで判断せず、毎回同じ根域の深さを確認し、測定時刻もそろえる。数字と観察位置を固定することで、天候による変化と設備の異常を切り分けやすくなる。

少量多頻度かん水でも、排水の悪い部分に水が重なれば過湿になり得る。かん水後に畝間へ水が残る場所、雨水が流れ込む場所、土の乾きが遅い株を記録し、全区画を同じ割合で増量しない。高温時のしおれや尻腐れ果を一つの原因だけで診断せず、根域の水分、排水、吐出の均一性を確認したうえで、地域の指導機関に相談する。

農林水産省の資料は、施設では遮熱・遮光資材、露地では品質低下を抑える整枝管理も挙げている。かん水を増やせば果実温度への対応が完了するわけではない。整枝や遮光を変更する前後に、葉陰から急に露出した果実がないか、換気を妨げていないかを確認する。毎朝「吐出量」「20cm付近の水分」「排水」「果実への直射」を一枚の記録表で追えば、盛夏の調整を勘ではなく履歴に基づいて進められる。