遮光率より先に「外す工程」を決める
農林水産省が2026年7月に公表した産地事例では、7〜9月ごろの高温によるホウレンソウの発芽不良、生育停滞、枯死などへの対策として遮光・遮熱資材が挙げられています。一方、農研機構は、遮光を全栽培期間続けると、光量不足によって葉色が薄くなり、徒長気味になりやすいほか、硝酸含量の増加やアスコルビン酸含量の低下につながり得ると説明しています。遮光は「掛けたか」だけでなく、「いつ、どう外すか」までを一つの管理工程として扱う必要があります。
今回の技術が対象とするのは、梅雨明け後から秋冷前までの高温期に、雨よけハウスで栽培するホウレンソウです。農研機構の試験は近畿地方北部で2004〜2012年に行われており、全国一律の処方ではありません。品種、地域、施設構造、資材の遮光率、出荷規格が異なるため、まず数畝を確認区として扱い、遮光継続区と比べながら地域の普及指導機関やJAの栽培基準に合わせて調整します。
草丈約20cmを「除去判断日」にする
農研機構の手順では、播種後から遮光し、草丈が約20cmに達した時点で資材を外します。20cmより早く外すと、その後の草丈の伸びが遅くなり、出荷サイズの確保に不利となる可能性があるためです。暦日や播種後日数だけで決めず、ハウス内の複数地点で草丈を測り、中央部、妻面側、出入口側の生育差も記録します。平均値だけでなく、出荷可能な株がどの程度そろっているかも除去判断に含めます。
資材の除去は夕方に行い、急な強光を避けます。特に除去直後から晴天が続く予報の場合は、葉焼けやしおれの有無を翌朝と日中に確認し、資料が示す葉水など地域で確立した管理を検討します。ただし、過湿や葉濡れが長引く条件を一律に作らないよう、換気、土壌水分、施設内湿度も同時に見ます。葉の異常を外観だけで病害や生理障害と断定せず、広がり方や発生場所を記録して指導機関へ相談してください。
除去後7〜10日と前2日の天候を一枚に記録する
遮光を外した当日を0日目として、7〜10日後を収穫候補期間に設定します。農研機構の資料では、遮光除去後の外観品質の改善には7〜10日を要し、硝酸含量は収穫2日前の日射量、アスコルビン酸含量は収穫前日の日射量の影響を強く受けるとされています。このため、除去日だけを記録するのではなく、「除去後日数」「2日前の天候」「前日の天候」「収穫予定時刻」を同じ作業表に並べます。
基本の収穫日は、除去から7〜10日が経過し、晴天が2日続いた翌日の午前中です。週間予報を見て、除去予定日から逆算して晴天が見込める収穫窓を仮置きします。ただし、予報が外れたときに日数だけを優先して収穫するのではなく、葉色、株重、草丈、出荷計画を再確認します。高温や強日射で品質低下が懸念される場合は、無理に待たず、地域の出荷基準と実際の株の状態を優先します。
小区画の比較を次作の基準に変える
初回から全棟の資材を一斉に外すのではなく、ハウスごと、播種日ごとに管理単位を分けます。確認区では、除去時の草丈、除去時刻、資材の種類と遮光率、除去後7日目と10日目の草丈・葉色・株重、収穫前2日間の天候を残します。可能なら同じ播種日の遮光継続区を少量残すと、季節や圃場条件による差と除去の効果を区別しやすくなります。
資材を着脱しにくい構造では、適期を把握しても作業が遅れます。農研機構は、雨よけハウス内にトンネル状に設置する方法を着脱しやすくする一例として示していますが、支柱の設置・回収が必要で、通路が狭い産地には適さないとも注意しています。次作に向けては、収量や品質だけでなく、除去と再設置に要した人数・時間、通路幅、他作業との競合も記録し、自家の施設で継続できる方式かを判断します。