農研機構が取りまとめた施設トマトの資料では、高温は花粉、花粉管、胚嚢などの形成に影響し、着果不良や果実肥大不良につながると整理されている。引用された試験の一つでは、開花6~10日前のハウス内平均気温と稔性花粉の関係が示され、平均29.5℃で稔性花粉がほぼゼロになるとの回帰推定が報告されている。ただし、これは特定条件の試験結果であり、全国一律の管理設定値ではない。重要なのは、花落ちを確認した日ではなく、その花が形成されていた前週の環境を振り返ることである。

見回りでは、開花中の花房だけでなく、その一段上にある未開花花房も確認する。花蕾の状態、当日の開花数、前週に開花した花の着果状況を花房ごとに記録し、温度記録と日付で結び付ける。花落ちだけから原因を断定せず、かん水、草勢、日射、湿度なども併記すれば、次の高温日に何を先行して動かすべきか判断しやすくなる。

高温対策の判断には、ハウス外気温だけでなく、作物が実際に受けた温度が必要になる。温度センサーは直射日光や屋根面の放射を直接受けないよう通風と遮へいを確保し、主要な花房の高さに置く。長いハウスや温度むらのある施設では、入口側だけでなく中央部や奥側も測り、最高温度、夜間の最低温度、高温が続いた時間帯を残す。センサー位置を変えた日は、その事実も記録する。

翌週までの花房を守る観点から、毎朝、天気予報と前日の温度推移を照合する。日中の高温だけでなく、夜間も温度が下がりにくかった日を印として残し、その後7~10日ほどは開花数と着果状況を重点的に追う。この時間差を記録できれば、対策前後の花房を混ぜて評価することを避けられる。

静岡県農林技術研究所は、施設園芸の高温対策の基本を換気、遮光・遮熱、冷却の組み合わせとしている。まず側窓、天窓、妻面などが十分に開き、暖まった空気の出口と外気の入口が確保されているかを確認する。防虫ネットの目詰まり、カーテンの収束不良、作物や資材による通風阻害も点検対象になる。換気が不足したまま冷却機器を追加しても、施設内の温度むらを見落としやすい。

遮光率を高くすれば必ずよいわけではない。静岡県の技術集は、遮光率が高すぎると光合成不足につながると注意している。開閉できる設備では、強日射・高温となる時間帯を中心に使い、朝夕や曇天時まで必要な光を遮っていないか確認する。細霧冷房は霧の蒸発を利用するため、湿度の高い日は効果が小さくなる。使用時は換気や送風と組み合わせ、葉や花が長時間ぬれ続けないかも見る。

農林水産省が2026年7月に公表した産地事例では、施設トマトの高温対策として、遮光・遮熱、外気導入、妻面や肩部の換気、日射量に応じたかん水などが挙げられている。自園での評価は、対策した日の室温だけで終えず、「開花した花数」「着果を確認できた数」「落花数」を同じ花房で追う。さらに、対策を動かした時刻、遮光した時間、換気窓の状態、かん水回数を添えると、次の高温日に再現できる記録になる。

花落ちや着果不良には複数の要因が関係するため、温度記録だけで原因を決めつけない。地域の普及指導機関やJAと、品種、作型、施設構造を踏まえて判断する。着果促進剤など農薬に該当する資材を使用する場合は、対象作物、使用時期、使用濃度・量、使用回数など、最新の農薬登録内容と製品ラベルを必ず確認する。環境対策の記録と資材使用の記録を分けて残すことも、後日の検証に役立つ。