警報を「作業開始の合図」にしない
気象庁の警報・注意報は、避難や防災行動に必要な時間を考慮し、現象が予想された段階で発表される。ただし、予測が難しい場合は十分な猶予時間を確保できないこともある。台風情報、地域の警報・注意報、自治体の避難情報を確認する担当者と時刻を決め、情報を受けてから作業内容を考え始めるのではなく、あらかじめ作った一覧の実行可否を判断する運用にする。
一覧には、施設名、主な作物、確認できた耐風速、補修が必要な箇所、直前作業、作業終了・退避時刻を記す。退避時刻は「全部終わった時」ではなく、予想される風雨の強まり、移動時間、日没、道路や水路の状況を踏まえて先に固定する。予定時刻までに終わらない作業は残し、人の安全を優先する。
施設ごとに耐風速と「風の入口」を確認する
耐風速はハウスの形式、部材、基礎、施工条件、経年劣化、補強状況で異なる。施工時の仕様書や図面、施工業者の資料を確認し、分からない場合は数値を推測して書かない。基礎部や接続部、柱、谷樋の腐食・さび、筋かいやブレースの留め金具、被覆材のたるみ・破れ、ハウスバンドの緩みを、風の弱い平時に点検する。特に出入り口、妻面、天窓、側窓、谷部など、風が吹き込み得る場所を施設図に印しておく。
気象庁によると、最大瞬間風速は最大風速の1.5倍程度になることが多く、大気が不安定な場合などには3倍以上になることもある。地形や建物の影響で局地的に風が強まる場合もあるため、広域予報の一つの数値だけで自圃場の安全を断定しない。過去に被覆材が浮いた面、扉が動いた方向、飛来物が集まった場所も記録し、次の平時点検に反映する。
平時・接近前・退避直前の作業を分ける
平時に行うのは、腐食部や破損部の補修、必要な筋かい等の設置、排水溝・谷樋・縦樋の清掃、燃料タンクやガスボンベの固定、飛散し得る資材の保管である。停電に備え、天窓・側窓・遮光カーテンを手動で操作する器具と足場、かん水用水、所有している非常用電源の接続先と動作も確認する。接近直前には、換気部が完全に閉まるか、出入り口を固定できるか、被覆材や留め金具に新たな緩みがないかをチェックリストで確認する。
換気扇による減圧は、農林水産省の資料では開口部や吸気孔を塞いだうえで排気運転する方法が示されているが、設備構成や運転方法を確認せず一律に実施しない。施設の取扱説明書や施工業者の手順に従う。確認された耐風速を超える強風が予想され、被覆材の除去を検討する場合も、風が強まる前に判断する。切断除去では共済金の支払いに影響する可能性があるため、事前に農業共済組合等へ連絡し、必要な手順を確認する。強風下では除去や補修のために戻らない。
通過後も「安全確認→換気→記録」の順にする
農林水産省は、暴風雨の最中は農地やハウスを見回らず、収まった後も増水した水路などの危険箇所に近づかないよう求めている。警報の解除だけを再開条件にせず、周辺道路、冠水、倒木、電線、施設の傾きや部材の落下危険を外側から確認する。危険が残る場合は内部へ入らず、施工業者や関係機関に相談する。
安全を確認できた施設から、被覆材、支柱、防虫ネット、ボルト、筋かい、環境制御装置などを点検する。台風通過後は日射によってハウス内温度が急上昇することがあるため、安全に操作できる状態なら換気、遮光、かん水設備を復旧する。被害があれば修理や撤去を急ぐ前に、安全な位置から全景と損傷箇所、確認時刻を記録し、加入先に必要な連絡や記録方法を確認する。今回の作業終了時刻と残った課題も一覧に追記すれば、次の台風時に優先順位を組み直せる。